今日の商標

2024年9月13日

異議2023-900190決定日 2024/4/18
適用条文本件商標引用商標判断
4条1項11号SoFun
(標準文字)
×
(商標類似)
  • 審判1審決抜粋
  • 所感

1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「SoFun」の文字を標準文字で表してなるところ、当該語は、辞書類に載録されている語ではなく、特定の意味合いをもって親しまれている語でもないことから、一種の造語として認識されるものである。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「ソファン」の称呼が生じ、特定の観念を生じない一種の造語として認識される。
(2)引用商標について
引用商標は、別掲のとおり、「Sofirn」の欧文字及び「ソファン」の片仮名を2段に横書きしてなるところ、下段の片仮名は、上段の欧文字の読みを表したものと理解されるものである。
そして、当該語は、辞書類に載録されている語ではなく、特定の意味合いをもって親しまれている語でもないことから、一種の造語として認識されるものである。
したがって、引用商標は、その構成文字に相応して「ソファン」の称呼が生じ、特定の観念を生じない一種の造語として認識される。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標との類否を検討するに、両商標は、全体の外観において相違するとしても、本件商標と引用商標の上段の「Sofirn」とは、語頭部の「SoF(Sof)」について、3文字目が大文字と小文字の差異があるものの、その文字のつづりを同じくするものであって、末尾の「n」も同じくするものであるから、それらの構成文字の中間部において「u」と「ir」の差異を有してなるも、外観において近似した印象を与えるものである
そして、称呼においては、本件商標と引用商標は、共に「ソファン」の称呼を生じるものであるから、両者は称呼を同一にするものである。
さらに、観念においては、本件商標と引用商標とは、共に特定の観念を生じないものであるから、両者は観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないものの、外観において差異を有するとしても、その差異は上記のとおり商標の類否全体に大きな影響を与えるものではなく、近似した印象を与えるものであり、「ソファン」の称呼を共通にするものであるから、両者の外観、称呼、観念等によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は相紛れるおそれのある、互いに類似の商標というのが相当である。
(6)本件商標権者の主張について
本件商標権者は、本件商標は「SoFun」の文字から構成されるところ、その構成中「So」は「とても」、「Fun」は「おもしろい」を示す語として日本人の中に広く浸透しており、「SoFun」であれば「とてもおもしろい」の意味合いがあるとほぼ全員が認識するものと考えられ、さらに、本件商標権者のウェブページ(乙1)に示されるように、本件商標権者は「中小企業が再び輝く社会を作り、日本をおもしろくする。」をビジョンとして社名と商標の周知活動、広報活動を行っており、一般需要者の間にも「SoFun」に「とてもおもしろい」の意味合いがあると強く根付いている旨主張する
しかしながら、たとえ、「So」が「とても」を、「Fun」が「おもしろい」を表す語であるとしても、両語をスペースを介さずに結合してなる「SoFun」の文字(語)は、一般に使用される辞書類に載録されていることは認められず、特定の意味合いをもって親しまれている語であるともいえないことから、一種の造語として認識されるというべきである。
そして、本件商標権者が提出した証拠によっては、同人が同人のウェブサイトにおいて「中小企業が再び輝く社会を作り、日本をおもしろくする。」をビジョンとして掲げていることはうかがえるものの、「SoFun」の文字が、一般の需要者の間に、「とてもおもしろい」の意味合いがあると認識されていることを具体的に立証したものと認めることはできない。

外観近似は厳しめ?
本件は、「SoFun」と「Sofirn」を比較し、これらの外観において、差異の影響は大きくなく、近似した印象を与えると判断された。
率直な感想をいえば、「需要者において、この2つの外観が似ていると感じられることは稀ではないか」と思った。
2つの商標が、時と場所を同じくしたところに並べて表示されていても、また、時と場所を異にしたところに表示されていても、私なら見間違うことはない。それくらいに外観には明瞭な違いがあるように思える。
そもそも、引用商標は「ソファン」の片仮名がなければ、誰もが素直にこのアルファベットの綴りを「ソファン」と読むとはいえないだろう。「ソフィアン」と呼ぶ人もいそうであるし「ソファーン」と呼ぶ人もいそうだが「ソファン」と短く呼ぶ人はいない気がする。
だからこそ引用商標は「ソファン」のフリガナを振っている、とも考えることができる。つまり、振り仮名を考慮せずに、アルファベットの綴りだけを比較すれば、これらは称呼の違いにも影響を与えるものであろう。
私は本件決定には反対の立場であるが(商標非類似と思うが)、本件には、次のような事情があったことが異議申立人によって明らかにされている。

「登録第6274921号商標(甲3(1))の審査段階において、登録第5895546号商標(甲2)を引用した拒絶理由通知(甲3(2))を受け、これに対応するために同一又は類似する指定商品(電気通信機械器具など)を削除した結果、拒絶の理由が解消した経緯からも裏付けられる。」

この登録第6274921号は「Sofun」であり(fが小文字)、引用商標は本件と同じものである。つまり、fが小文字か大文字かの違いのみである商標に対し、別件で特許庁は4条1項11号と判断していたのである。
特許庁には、これと異なる判断がしづらいというバイアスがかかっていたかもしれない。

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