今日の商標

2024年11月06日

不服2024-2659審決日 2024/6/17
適用条文本願商標引用商標判断
4条1項11号CALATAS
(標準文字)
×
(類似)
  • 審判1審決抜粋
  • 所感

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本願商標について
…本願商標の構成中「SUPER」の文字及び「スーパー」の文字は、「より優れた」などを、「CARE」の文字及び「ケア」の文字は、「手入れ」などを、それぞれ意味する語であり(出典:「広辞苑 第七版」株式会社岩波書店)、いずれも我が国において広く一般的に使用され、理解されているものである。そのため、「SUPERCARE」の文字及び「スーパーケア」の文字からは、「より優れた手入れ」ほどの意味合いが容易に理解されるものであるところ、原審提示の情報にあるように、本願の指定商品を取り扱う分野において、「スーパーケア」の文字が、その商品が「肌などの手入れ用の商品であって、優れたもの」であることを表現するための、商品の宣伝広告用の語句又は誇称表示として、しばしば使用されている実情が認められることからすれば、本願商標は、「CALATAS」の文字と「SUPERCARE」の文字及び「カラタス」の文字と「ス―パーケア」の文字を結合し、一連に表したものと容易に看取されるものといえる。
 そして、本願商標構成中の「CALATAS」の文字及び「カラタス」の文字は、一般的な辞書類に掲載されていない語であって、特定の意味合いを有する語として親しまれているといった事情も見当たらないことから、造語であるというのが相当であって、自他商品の識別標識としての機能を十分に有するものといえる。
 他方、本願商標構成中の「SUPERCARE」の文字部分及び「スーパーケア」の文字部分は、上述の実情から、自他商品の識別標識としての機能を有しないか、又は、その機能が極めて弱いものといえる。
 また、本願商標より自然に生じる「カラタススーパーケア」の称呼は、10音とやや冗長である上、中間に無声の摩擦音である「ス」が連続することから、一気一連に発音することが困難であり、「カラタス」と「スーパーケア」との間で一息置いて発音することも自然であるといえる。
 以上のことからすると、簡易迅速を尊ぶ商取引の実際においては、本願商標を構成する「CALATASSUPERCARE」の文字及び「カラタススーパーケア」の文字に接する取引者、需要者が、自他商品の識別標識としての機能を十分に有する「CALATAS」の文字部分又は「カラタス」の文字部分(以下「本願要部」という。)に着目し、当該文字部分をもって取引に当たることもあるというべきである。
したがって、本願商標よりは、本願要部に相応した「カラタス」の称呼も生じ、また、特定の観念は生じないものといえる。
 イ 引用商標について
 引用商標は、「CALATAS」の文字を標準文字で表してなるところ、これは、一般的な辞書類に掲載されている語ではなく、また、特定の意味合いを有する語として親しまれているといった事情も見当たらないことからすると、特定の意味合いを認識させない造語であるというのが相当である。
 そうすると、引用商標よりは、その構成文字に相応した「カラタス」の称呼が生じ、また、特定の観念は生じないものといえる。
 ウ 本願商標と引用商標の類否について
 本願商標と引用商標を比較するに、外観においては、全体としては「SUPERCARE」の欧文字の有無や片仮名の有無で相違するものであるが、本願要部のうち「CALATAS」の文字部分と引用商標との比較では、書体がわずかに異なるのみで「CALATAS」のつづり字を共通にすることから、外観上、相当程度近似した印象を与えるものである。
 そして、称呼においては、「カラタス」を共通にし、また、観念においては、いずれも特定の観念を生じないから、比較できないものである。
 そうすると、本願商標と引用商標とは、全体の外観においては相違があるものの、本願要部のうち「CALATAS」の文字部分と引用商標との外観の対比においては相当程度近似するものであり、また、称呼を共通にし、観念は比較できないものであるから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本願商標と引用商標は、商品の出所について誤認混同を生じるおそれのある、互いに類似の商標というのが相当である。

要部認定判断の決め手は「発音のしやすさ」?
前回の「本日の商標」では「フィルたんワンタッチ」が、識別力のある語+識別力のない/弱い語の組合せであっても、要部認定されなかったが、本件は、識別力のある語+識別力のない/弱い語の組合せで、要部認定された事例である。
「カラタススーパーケア」も「フィルたんワンタッチ」も文字数としてはどちらも10文字であるが、発語としては「フィ」は一音で発せられるので9文字と捉えることができる。が、どちらも短くはなく、それなりの長さの後であるため、審決が分かれたことの大きな要因とは言い難いだろう。
ポイントは、商標の発しやすさにあったのではないかと思う。
審決は「中間に無声の摩擦音である「ス」が連続することから、一気一連に発音することが困難であり、「カラタス」と「スーパーケア」との間で一息置いて発音することも自然である」と述べ、本願商標が一息で発しづらいことを判断要素として挙げている。
「フィルたんワンタッチ」は、フィルたんとワンタッチが2段構成になっており、ワンタッチの方が大きく表示されていた。
一方で、本願商標の「カラタススーパーケア」は、同じ大きさで、一行で表示されている。
表示の形態だけでいえば、「フィルたんワンタッチ」の方が、フィルたんとワンタッチを別個に分けて読みやすいのだが、「フィルたんワンタッチ」は図形化したことによって一体感を出したという要素が評価されて要部認定を免れ、本願商標は一息での発しづらさという要素から要部認定された。
商標は、様々な判断要素を総合して評価されるため、個々の判断要素を類型化しにくいのだが、要部認定において「一息での発しやすさ」というファクターは影響力の大きな部類に入るものと認識しておくのが無難かもしれない。

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