今日の商標

2024年9月19日

不服2022-19508決定日 2024/5/17
適用条文本件商標判断
3条1項3号ストロングライトシステム
(標準文字)
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不服2022-18374決定日 2024/7/10
適用条文本件商標判断
3条1項3号メイン市場
(標準文字)
  • 審判1審決抜粋
  • 審判2審決抜粋
  • 所感

第5 当審の判断
1 本願商標を構成する文字の語義及び使用状況並びに指定商品の取引の実情について

(2)本願の指定商品である家庭用の脱毛器の分野においては、光を利用して脱毛を行う方式(光脱毛)が多く採用されている実情がうかがえる
また、本願商標の構成中の「ライト」の文字は、別掲2のとおり、脱毛の分野において、「光」を表す語として使用されている。
さらに、本願商標の構成中の「ストロング」の文字は、上記(1)のとおり「強い、強力な」等の意味を有するものであるところ、家庭用の脱毛機は、クリニック等で使用される脱毛器と比較して強い力で照射できないことから、メーカーによっては、家庭用の範囲内での高出力化を試みるなど、従来品よりも強化された光の照射を特徴として掲げる商品も見られる(別掲3参照。)。
(3)…そうすると、本願の指定商品の分野においては、本願商標「ストロングライトシステム」の構成文字全体からは、「強い光の方式」ほどの意味合いを理解させるものであるとともに、商品の優位性や特徴を表す語として認識され得るものというのが相当である。
2 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
上記1によれば、「ストロングライトシステム」の文字よりなる本願商標を、その指定商品に使用をしても、これに接する取引者、需要者は、「強い光の方式」ほどの意味合いをもって、商品の品質、特徴を表したものと認識するにとどまるというのが相当である
加えて、本願商標は、上記1(1)で述べたとおり標準文字で表されたものであるから、普通に用いられる方法で表されたものである。
したがって、本願商標は、商品の品質、特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、本願商標を、「ストロングライトシステム(強い光の方式)」と関連のない商品(例えば、光を利用せず、毛を挟んで抜くローラー式の家庭用脱毛機械器具)に使用をするときには、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。

別掲1 本願の指定商品である家庭用の脱毛器の分野において、光を利用して脱毛を行う方式(光脱毛)が多く採用されている実情
(1)「ビックカメラ.com」のウェブサイトにおいて、「【2024年】脱毛器のおすすめランキング19選 VIOやヒゲに対応したモノも紹介!」の見出しの下、「「光美容器」は、フラッシュやレーザーなどによる光を肌に照射して、ムダ毛を目立ちにくくするアイテム。毛が根本的になくなるわけではないため、継続的にケアを行う必要があります。」、「家庭用脱毛器で多く採用されているのが「フラッシュ式」です。光を利用してムダ毛を目立たなくする仕様。痛みを感じにくい上、広範囲に照射できるのが特徴です。」の記載がある。

別掲2 「ライト」の文字が、脱毛の分野において、「光」を表す語として使用されている実情
(1)「MUSEE PLATINUM」のウェブサイトにおいて、「光脱毛の仕組みは?レーザー脱毛との違いや料金について紹介」の見出しの下、「光脱毛とは、ライトを肌にあてて毛根にダメージを与える脱毛方法です。」、「光脱毛の仕組み/光脱毛は、照射すると毛根にダメージをもたらすライトを使用しています。」の記載がある。

3 当審の判断
本願商標は、「メイン市場」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「メイン」の文字は「主要なこと。最も重要な部分。」等の意味を、「市場」の文字は「売り手と買い手とが特定の商品や証券などを取引する場所。」等の意味をそれぞれ有する語(株式会社岩波書店 広辞苑第七版)として、いずれも我が国において広く親しまれている語であることから、これらの語を組み合わせた本願商標は、全体として「主要な市場」程度の意味合いを理解させるものであるが、その指定役務に係る具体的な質(内容)を表示するものではない。
そして、当審において職権をもって調査するも、本願の補正後の指定役務を取り扱う業界において、「メイン市場」の文字が、役務の具体的な質等を表示するものとして取引上一般に使用されている事実は発見できず、さらに、本願商標に接する取引者、需要者が、当該文字を役務の質等を表示するものと認識するというべき事情も発見できなかった
そうすると、本願商標は、その補正後の指定役務に使用しても、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章とはいえず、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。

3条1項3号の判断における「使用の事実」のウェイト
本件では「使用の事実」の有無によって判断が分かれた事例を並べてみた。
1件目の「ストロングライトシステム」は脱毛に関する指定商品役務との関係で3条1項3号に該当すると判断され、2件目の「メイン市場」は有価証券の取引に関する指定役務との関係で3条1項3号には該当しないと判断された。
3条1項3号の判断において「使用の事実の有無」は大きなウェイトを占めているように感じられる。
判断される「使用の事実」とは
1件目の「ストロングライトシステム」において注目しておくべきことは、判断される「使用の事実」が「ストロングライトシステムという言葉が使用されている事実ではない」ということである。
つまり、「使用の事実」における判断対象は商標そのものに限らないということである。
審決は、指定商品である「家庭用の脱毛器」における取引の実情として「メーカーによっては、家庭用の範囲内での高出力化を試みるなど、従来品よりも強化された光の照射を特徴として掲げる商品も見られる」といった使用の事実を挙げた上で、「ストロングライトシステム」が、「強い光の方式」という意味合いの品質・特徴を需要者に認識させるものであるとしている。
商標出願の際に、「使用の事実の有無」を調査するときには、商標そのものだけでなく、その商標の意味合いを考慮した上で調査をすべきであろう。

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