会員ログイン
判例特許

令和4年(行ケ)第10030号 取消決定の取消請求事件(大日本印刷株式会社 vs 特許庁)

「除くクレーム」の類型
~クレーム解釈を制限して「除くクレーム」の訂正を適法とした事例~
令和5年2月7日(2023/2/7)判決言渡 判決文リンク
#特許 #訂正要件

1.実務への活かし

・~権利化まで #除くクレーム #請求項の作成 #訂正要件
 除くクレームを検討するときには、「除くクレーム」のどの類型に当てはまるかを“実質的”に判断した上で、クレームを作成すべきである。クレームの記載が、実質的に判断される類型と合致していない「除くクレーム」は、認められない可能性が高くなる。

※「除くクレーム」には、請求項に記載された発明特定事項(構成)に直接掛かる“内的”な「除くクレーム」(内的除外)と、請求項に記載された発明特定事項にはない別の構成に掛かる“外的”な「除くクレーム」(外的除外)がある。また、外的除外の「除くクレーム」には、その発明が備えるものとしての構成を除外する「除くクレーム」(発明内在型)と、その発明とは別の構成であってその発明と共に備える構成を除外する「除くクレーム」(発明外在型)がある。

∵本件では、本質的には、「内在型の外的除外」であるべき「除くクレーム」を、特許権者が「外在型の外的除外」に読めるように作成してしまったため、特許庁において訂正要件違反の取消決定がされた。また、結果的に訂正要件違反は取り消されたが、知財高裁は、このような請求項に、明確性要件またはサポート要件の問題があることを暗に指摘した。

2.概要

 特許権者である大日本印刷株式会社(以下、「大日本印刷」という。)が有する特許第6547817号(発明の名称「ポリエステル樹脂組成物の積層体」。以下、「本件特許」という。)に対する異議申立てを受け、取消決定がされたため、これの取消しを求めた事案である。
 異議申立ての経緯の中で、大日本印刷は、請求項の訂正を請求し、特許庁は、これを訂正要件違反として認めなかった。本件で知財高裁は、特許庁の「訂正要件違反」の判断の誤りを認め、特許庁のした「取消決定」を取り消した。

 本件特許の請求項1には、「第1の層」と「第2の層」を含む「少なくとも2層を有する積層体」の発明が記載されている。また、発明の特徴として、第1の層と第2の層の材料や成分が特定されている(材料や成分を特定する具体的な記載部分は、本件の判決を理解するのに知らなくてもよい部分なので気にしないでよい。)。
 大日本印刷は、訂正請求により、元の請求項1+4の内容にさらに「除くクレーム」を加える訂正を行った。争点の中心となったのは「除くクレーム」部分である(下記、訂正請求項の下線部)。

訂正請求項
 少なくとも2層を有する積層体であって、
 第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、添加剤をさらに含んでなり、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
 第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まないことを特徴とする、積層体(但し、該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるものを除く)。

 この訂正に対し、特許庁は、次のような理由から訂正要件に違反すると判断した。

特許庁の判断(前審の異議決定より抜粋。下線は付記)
「訂正事項2の「(但し、該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるものを除く)」との事項を追加することは、特許請求の範囲の請求項4に係る発明の「少なくとも2層を有する積層体」外の構成である、「積層体上」という構成について特定することであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4に係る発明の「少なくとも2層を有する積層体」そのものの構成を特定していない
 また、「(但し、該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるものを除く)」との事項により、「少なくとも2層を有する積層体」そのものを構成する層の性状や形状等の諸元を特定しているわけでもない
 そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられた「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しない。
 さらに、…特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げられた「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものにも該当せず、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げられた「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものにも該当せず、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げられた「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものにも該当しない。
 よって、訂正事項2に係る訂正の目的は、特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げられたいずれのものにも該当しない。」

 つまり、特許庁は、「除くクレーム」部分は、「積層体」外を特定しているのであるから、発明の対象である「積層体」に対する特定になっておらず、よって、発明の対象である「積層体」に対しては変化がない=減縮になっていない、と判断したものと推察できる。

 これに対し、知財高裁は、次のように判断した。

知財高裁の判断(判決から抜粋。下線は付記)
「訂正前の請求項1においては、「積層体」について、「少なくとも2層を有する積層体」と特定しているのにすぎないのであるから、ここにいう積層体には、「第1の層」、「第2の層」及びその他の任意の層からなる積層体が含まれることになるところ、「無機酸化物の蒸着膜」及び「蒸着膜上に設けられたガスバリア性塗布膜」も層を形成するものである以上、この任意の層に該当するといえる。したがって、訂正前の請求項1における積層体は、「第1の層」、「第2の層」並びに「無機酸化物の蒸着膜」及び「蒸着膜上に設けられたガスバリア性塗布膜」からなる積層体(以下「積層体A」という。)を含んでいたものである。
 そうすると、訂正事項2は、「積層体A」を含む訂正前の請求項1における積層体から積層体Aを除くものといえ、このように積層体を特定したことにより、訂正前の請求項4に係る発明の技術的発明が狭まることになるのであるから、訂正事項2が特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは明らかである。
 被告は、…訂正事項2は、「積層体」から、「無機酸化物の蒸着膜」及びその上の「ガスバリア性塗布膜」を「積層体」内の構成としたものを除く記載とはなっておらず、「積層体」の外に該当する「積層体」の「上」に、新たに「無機酸化物の蒸着膜」を設け、さらにその上に「ガスバリア性塗布膜」を設けたものを除くとする記載となっているから、「積層体」の範囲自体を減縮していない旨主張するしかし、本件発明は、「第1の層」及び「第2の層」で完結した積層体を特定事項とするものではなく、特許を受けようとする発明を、「第1の層」及び「第2の層」を有する全ての積層体とするいわゆるオープンクレームに該当するものであるから、権利範囲に含まれる具体的層構成を特定するに当たり、積層体の内外を形式的に区別しても意味がない(「第1の層」及び「第2の層」の外部の層も全て、本件発明における積層体の構成要素となる。)。…
 また、被告は、本件訂正事項2のような「除くクレーム」とする訂正は、第三者に明細書等の記載に関して誤解を与える可能性があり、不測の不利益を及ぼす蓋然性が高いものというべきである旨主張する。しかし、被告主張のような懸念が仮にあったとしても、それは、訂正後の請求項につき、明確性要件やサポート要件等の適合性を巡って検討されるべき問題というべきであるから、いずれにしても、本件事案において、この点をもって直ちに訂正を認めない理由とすることは相当でない。」

 つまり、知財高裁は、「除くクレーム」部分で除かれる構成(「無機酸化物の蒸着膜」及び「ガスバリア性塗布膜」)は「積層体」の「層」に該当するものである以上、この構成は「積層体」の構成要素として捉えるべきであるとして、内容の実質面から、本件の「除くクレーム」の解釈を行った。
 そして、特許庁の「除くクレーム部分が「積層体」外を特定するものである」という主張に対しては、本件の「除くクレーム」について「積層体」内外のどちらを特定するかを形式的に区別することに意味はないとして一蹴した。

 また、知財高裁は、本件の「除くクレーム」の記載が「積層体」外の構成を除くような記載になっているという特許庁の主張については、訂正要件で論ずべきことではなく、訂正後の請求項に対する「明確性要件やサポート要件」で論ずべき問題であるとした。

3.本件のより詳細な説明、及び、判決内容の考察

3-1.判決についての感想

全体的な結果について:納得度80%

 本件の「結論」部分には特に異論はない(その意味での納得度は100%である)。

 一方で、結論を導く「理由」部分は、その内容があまり論理的でなかったり、舌足らずでわかりにくかったりするため、あまり質の良い説明になっていないというのが率直な感想である。

 この判決に書いてあることをそのまま鵜呑みにすると、間違った認識を持ってしまい、実務で誤った対応を取りかねない危険もある。そのため、以下では、結論を導く「理由」がより論理的な内容となるように、知財高裁の説明を補充したいと思う。

 また、この機会に、「除くクレーム」の類型と、クレームのオープン/クローズの関係についても整理をしておきたいと思う。少し勉強っぽくなってしまうが、内容は難しくないので、簡単な頭の整理と思っていただきたい。

3-2.本判決について

オープンクレームとクローズドクレーム

 まず、オープンクレームとクローズドクレームの意味を確認しておく。オープンクレームとは、請求項に記載された構成以外の構成を含む形態であることが、原則的に請求項に係る発明の技術的範囲の属否に影響しないものをいい、クローズドクレームとは、請求項に係る発明に関し、請求項に記載された構成以外の構成を含む形態がその発明の技術的範囲から除外されるものをいう。

 下図のイメージに基づくと、オープンクレームであれば、構成A+B+C+Dを実施する行為も発明1を実施する行為に含まれるが、クローズドクレームであれば、構成A+B+C+Dを実施する行為は発明1を実施する行為に含まれない。

「除くクレーム」の類型

 除くクレームの類型は、大別すると、「内的除外」「外的除外」の2つに分けて考えることができる。

 「内的除外」とは、請求項に記載された発明特定事項に含まれる要素を直接的に除く方式である。
 例えば、「構成Aは金属を材料とする」という記載を「構成Aは金属を材料とする(但し、銅は除く。)」という記載がこれに当たる。
 また例えば、「a,b,cから任意に選択される構成Aと、e,f,gから任意に選択される構成B」という記載を「a,b,cから任意に選択される構成Aと、e,f,gから任意に選択される構成B(但し、構成Aがaであり、構成Bがgである形態を除く。)」という記載がこれに当たる。

 「外的除外」とは、請求項に記載された発明特定事項とは別の構成を有する形態を除く方式である。
 例えば、「構成Aを有する装置」という記載を「構成Aを有する装置(但し、さらに構成Bを有する装置を除く)」という記載にする場合がこれに当たる。

 また、「外的除外」は、さらに「内在型」の外的除外と「外在型」の外的除外とに分けて考えることができる。

 「内在型」とは、発明対象(物や方法)に含まれる構成としての「別の構成」を有する形態を除く方式である。
 例えば、「表示画面を有する携帯端末」という記載を「表示画面を有する携帯端末(但し、操作ボタンを有する携帯端末を除く。)」という記載にする場合がこれに当たる。(※ここでの操作ボタンは、ハードウェアとしてもので、画面上のものではない。ガラケーもスマホも含んでいた携帯端末からガラケーを除いたといったイメージがわかりやすいだろう)

 「外在型」とは、発明対象に含まれる構成としてではなく、発明対象とは互いに独立した「別の構成」を有する形態を除く方式である。
 これはイメージしづらいと思うが、例えば、過去に取り上げた「令和3年(行ケ)第10111号」では、「レーザ加工装置」の発明に対し、「加工対象物はシリコンウェハである」という記載を「加工対象物はシリコン単結晶構造部分に前記切断予定ラインに沿った溝が形成されていないシリコンウェハである」という記載にした。
 これは、書き方が違うだけで、「加工対象物はシリコンウェハである(但し、シリコン単結晶構造部分に前記切断予定ラインに沿った溝が形成されているシリコンウェハを除く。)」という記載と同義である。
 この「除くクレーム」は、発明対象である「レーザ加工装置」の構成ではなく、レーザ加工装置からは独立した「加工対象物」という構成について、「溝が形成されているシリコンウェハ」を除いたものといえる。

 まとめると、「除くクレーム」には、「内的除外」パターンと、「内在型の外的除外」パターンと、「外在型の外的除外」パターンがあると考えることができる。

クレームのオープン/クローズと「除くクレーム」の類型との関係

 次に、クレームのオープン/クローズと「除くクレーム」の類型との関係を一つ一つ確かめていくことにする。

 「内的除外」パターンの除くクレームは、発明特定事項に対する直接的な除外であるため、オープンクレームであっても、クローズドクレームであっても、記載することができるだろう。

 では、「内在型の外的除外」パターンはというと、オープンクレームであれば、発明の技術的範囲が、請求項に表れていない構成を有する形態も含み得るため、この技術的範囲の一部を除外することは、発明の特定になると言えるだろう。
 一方で、クローズドクレームは、発明の対象が、他の構成を有する形態を既に除外しているため、このパターンの除くクレームは、結局のところ、既に除かれている部分を除こうとしているのであり、何も除いていないに等しい。
 そうすると、このような除くクレームの記載には意味はなく、そればかりか、いたずらに第三者を混乱させ、発明の理解の邪魔になることから、請求項を不明確(記載の技術的意義が不明)なものにするという理由で許されないだろう。

 最後に「外在型の外的除外」パターンはというと、上述の例からもわかるように、発明対象ではなく、発明対象から独立した別の構成について除外するというのは、謂わば、発明の利用形態(用途)を制限するものと捉えることができる(上記の例でいえば、レーザ加工装置を使用する加工対象物が限定されたといえる。)。「外在型の外的除外」パターンは、実質的には、用途限定に捉え直すことができるだろう。
 その意味からすると、オープンクレームであっても、クローズドクレームであっても、その発明が利用される形態の一部を除くことは問題ないはずであり、どちらであっても記載することはできるだろう。

 以上をまとめると、クレームのオープン/クローズと「除くクレーム」の類型との関係は、下表のようになる。

 そこで、このように整理をした上で、本件の判決を振り返ってみたいと思う。

本判決について

「除くクレーム」と「特許請求の範囲の減縮」

 除くクレームとは、その字の如く、権利範囲(特許発明の技術的範囲)の一部を除外するのであるから、その性質は「特許請求の範囲の減縮」といえるだろう。
 上記の表のように、クローズドクレームに対する「内在型の外的除外“除くクレーム”」については、請求項によって表される権利の性質上から「減縮」にはならないが、そもそもこの場合の「除くクレーム」が不適当であるならば、適当な「除くクレーム」は、原則的には特許請求の範囲を減縮するものと解すべきである。

 この点について、特許庁は、
「訂正事項2は、「該積層体」、すなわち、「積層体」から、「無機酸化物の蒸着膜」及びその上の「ガスバリア性塗布膜」を「積層体」内の構成としたものを除く記載とはなっておらず、「積層体」の外に該当する「積層体」の「上」に、新たに「無機酸化物の蒸着膜」を設け、さらにその上に「ガスバリア性塗布膜」を設けたものを除くとする記載となっているから、結局、「積層体」の範囲自体を何ら減縮していない。」
 と主張している。

 しかし、上記の表を見れば、この特許庁の主張が、それ自体失当であることを容易に理解できるだろう。仮に本件における「訂正事項2」が、発明対象である「積層体」内の構成を除いておらず、「積層体」外の構成を除くものであっても、そのことから直ちに「積層体」の範囲自体が何ら減縮されていないという結論を導くことはできない(むしろ、何らかの利用形態が制限されることになるため、減縮されていると言えるだろう)。

 なお、既に紹介した「令和3年(行ケ)第10111号」では、知財高裁は、「加工対象物はシリコンウェハである」という記載を「加工対象物はシリコン単結晶構造部分に前記切断予定ラインに沿った溝が形成されていないシリコンウェハである」という記載にする訂正の目的を「特許請求の範囲の減縮」と判断している。
 この記載は、「加工対象物はシリコンウェハである(但し、シリコン単結晶構造部分に前記切断予定ラインに沿った溝が形成されているシリコンウェハを除く)」という記載と同義であるため、知財高裁は、「外在型の外的除外」にあたる「除くクレーム」を「特許請求の範囲の減縮」と判断していることになる。

本件発明の「積層体」と「除くクレームで除かれる構成」の実質的な関係

 本件で争点となった「(但し、該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるものを除く)。」という訂正事項について、「該積層体上」という文言から、積層体外の構成を特定するものであるという見解に立った特許庁に対し、知財高裁は

「本件発明は、「第1の層」及び「第2の層」で完結した積層体を特定事項とするものではなく、特許を受けようとする発明を、「第1の層」及び「第2の層」を有する全ての積層体とするいわゆるオープンクレームに該当するものであるから、権利範囲に含まれる具体的層構成を特定するに当たり、積層体の内外を形式的に区別しても意味がない(「第1の層」及び「第2の層」の外部の層も全て、本件発明における積層体の構成要素となる。)。」

 と述べ、特許庁が、「積層体」内であるか外であるかに拘ること自体を否定している。この部分は、誤解を誘うような記載になっているので、誤った認識に陥らないよう説明を補足する。

 上記の文章を素直に読むと、本件発明の「積層体」はオープンクレームに該当するものであるから、「積層体」の内外を形式的に区別することには意味がない、と言っているように読める。
 しかしながら、「除くクレーム」が内在型か外在型かを区別することは、請求項に係る発明がオープンクレームであるからといって無意味になるわけではない。「内在型の外的除外」と「外在型の外的除外」は、実質的に性格の異なる内容であり、どちらに該当するかは、クレーム解釈にとっても重要である。

 それでは、知財高裁は、ここで何を言いたかったのか。

 知財高裁は、「オープンクレーム」だから「内外を形式的に区別することに意味がない」と言いたかったのではなく、本件の「除くクレーム」は、本質的に「内在型の外的除外」にあたるから、「該積層体上」という記載に拘ってこれを外在型であるとすることに意味はないと言いたかったのだろう。(内在型の外的除外であるから、本件発明がオープンクレームであることは前提となる。)

 「本件発明はオープンクレームであり、かつ、実質的に判断すれば本件の「除くクレーム」は「内在型の外的除外」である」という前提条件であれば、この条件から、「権利範囲に含まれる具体的層構成を特定するに当たり、積層体の内外を形式的に区別しても意味がない」という結論を導くことは合理的に理解できる。

 そうすると、下記のように判決文を記載していれば、もっとわかりやすかったように思う。

「本件発明は、「第1の層」及び「第2の層」で完結した積層体を特定事項とするものではなく、特許を受けようとする発明を、「第1の層」及び「第2の層」を有する全ての積層体とするいわゆるオープンクレームに該当するものであり、権利範囲に含まれる具体的層構成を特定するに当たっては、「第1の層」及び「第2の層」の外部の層も全て、本件発明における積層体の構成要素となるのであるから、積層体の内外を形式的に区別しても意味がない。」

 知財高裁は、本件の「除くクレーム」が「内在型の外的除外」であることを導くために、「除くクレーム」における「無機酸化物の蒸着膜」及び「蒸着膜上のガスバリア性塗布膜」の2つの「膜」が、「積層体」における「層」を形成するものであることを認定している。

知財高裁の判断(判決より抜粋。下線は付記)
「訂正前の請求項1においては、「積層体」について、「少なくとも2層を有する積層体」と特定しているのにすぎないのであるから、ここにいう積層体には、「第1の層」、「第2の層」及びその他の任意の層からなる積層体が含まれることになるところ、「無機酸化物の蒸着膜」及び「蒸着膜上に設けられたガスバリア性塗布膜」も層を形成するものである以上、この任意の層に該当するといえる。」

 この認定があることで、「積層体」とは読んで字のごとく「層」が積み重なったものであるから、「無機酸化物の蒸着膜」も「蒸着膜上のガスバリア性塗布膜」も、「積層体」の構成要素と捉えるべきことを、合理的に説明できる。

 ここで、一つの疑問が生じる。

 権利内容を文字で表現する特許発明において、その「記載」を軽視していいものでないことは、言うまでもない。それにもかかわらず、請求項の文言上、確かに「該積層体上」と記載されているのに、知財高裁はこれを「内在型」と解すべきと判断した。
 しかも知財高裁は、「該積層体上」という記載については、明確性要件やサポート要件の問題があり得ることを指摘しており、決して「該積層体上」という文言を軽視する立場に立っているわけではない。

 知財高裁がこのような強行的な判断に踏み切った理由は、特許庁の主張に欠陥があったからではないかと私は推察する。それこそ、「積層体の内外を形式的に区別しても意味がない」というフレーズは、特許庁の主張の欠陥を指摘するフレーズに相応しい。

 特許庁は、「該積層体上」という文言から「「無機酸化物の蒸着膜」及びその上の「ガスバリア性塗布膜」を「積層体」内の構成としたものを除く記載とはなって」いないという主張を行った。
 これは、「該積層体上」という文言からすると、「積層体」ではなく、「積層体」の外の構成を除いているのであるから、「積層体」の外で構成Aが除かれていたとしても、「積層体」内で構成Aを有することは除かれていないのだから、結局、除いたはずの構成を有する「積層体」が権利範囲に含まれてしまうことを懸念してのことであろう。

 確かに、特許庁の懸念する通り、このような「除くクレーム」によって特許を取得した後に、特許権者が「積層体の外の構成Aを有するものは除外したが、積層体内に構成Aを有するものは除外されていない」と第三者に主張するリスクはあるだろう。そして、このような乱暴な主張を形式上可能とする請求項を認めることになると、第三者が不測の不利益を被る可能性も否定できない。

 しかしながら、下図の通り、特許庁の懸念は、「内在型」であるか「外在型」であるかによって、結論を異にするものではない。よって、「該積層体上」という記載を、「外在型」と解するべきか「内在型」と解するべきかという議論は、この懸念を解消できる議論ではないのである。(=積層体の内外を形式的に区別することに意味はない)

 層1~4を有する積層体に関し、特許庁は、積層体の外において「層3及び層4」が除かれたとしても、積層体の内において「層3及び層4」を有することは除かれていないという懸念を述べているが、積層体の内において「層3及び層4」が除かれたとしても、積層体の外において「層3及び層4」を有することは除かれていないのだから、結局のところ、どちらにしたって懸念は残るのである。

 そして知財高裁は、除く対象が積層体の「層」に該当するのであれば、形式上「外在型」に読める記載であっても「内在型」として捉えるべきであるとすることが、上記の懸念を解消する論法であると判断したのだろう。

 つまり、上記のような懸念を解消するには「積層体」の「層」に関し、これを「内在型」と「外在型」で区別して書き分けること自体を許してはならないのであり、特許庁の主張に付き合わずに、このような方向に議論をシフトした知財高裁の判断は的確であり、さすがという他ない。

明確性要件及びサポート要件への言及

 知財高裁は、上述した通り、「該積層体上」という記載がされていたとしても、「積層体」の構成要素として捉えるべきと判断しつつ、以下のように、明確性要件についても言及した。

「被告は、本件訂正事項2のような「除くクレーム」とする訂正は、第三者に明細書等の記載に関して誤解を与える可能性があり、不測の不利益を及ぼす蓋然性が高いものというべきである旨主張する。しかし、被告主張のような懸念が仮にあったとしても、それは、訂正後の請求項につき、明確性要件やサポート要件等の適合性を巡って検討されるべき問題というべきである」

 上述したように、「該積層体上」と記載されていれば、「該積層体」が、発明対象である「積層体」を「該」で引用していることからして、「積層体」とは別に「積層体」の上に設けられる構成という解釈を読み手に誘引しやすいことは、知財高裁も認識するところなのだと思う。

 だからこそ知財高裁は、第三者に不測の不利益を及ぼす懸念を解消させるため、明確性要件やサポート要件の問題として検討すべきことを記しておいたのだろう。

 しかしながら、差し戻し後の「取消理由通知」において、特許庁は明確性要件やサポート要件の取消理由を挙げておらず、知財高裁のメッセージは届かなかったようである。

特許庁の判断

 本件で特許庁は「該積層体上」という言葉から、特許権者が、一見すると引用発明の実施形態を除く意図のように見える書き方で、その実は特許庁(及び第三者)を欺こうとしているのではという懸念を抱いたように思える。
 特許庁の「「無機酸化物の蒸着膜」及びその上の「ガスバリア性塗布膜」を「積層体」内の構成としたものを除く記載とはなっておらず」という主張は、この懸念の表れのようにも思える。

 一方で、本件で知財高裁は、特許庁の判断に誤りがあるとしたが、そうはいうものの、特許庁の役割を考えれば、このような懸念を抱かずに維持決定してしまうことの方が問題であり、不服があるなら裁判所で争ってもらおうという意図であるなら、特許庁の取消決定は英断だったと考えることもできる。

 事実、本件によって、「「無機酸化物の蒸着膜」及びその上の「ガスバリア性塗布膜」を「積層体」内の構成としたものを除く記載とはなっておらず」という懸念は晴れ、そのように見える記載であっても、実質的に「積層体」内の構成であると解すべきことが、裁判所によって明確に示された。ここまで解釈が示されれば、第三者も、上記のような懸念に怯えなくて済むだろう。

 また、現実的にも、特許庁において、知財高裁と同様の判断を行うことはできないだろう。文言上は「該積層体上」となっているにも関わらず、その後に続く構成をその実質的な内容面から「積層体」内の構成と解する判断は、明らかに「解釈」の領域にあり、行政庁たる特許庁が独自に行える判断の枠を超えているように思える。

適切な訂正請求項

 果たして大日本印刷は、特許庁の危惧するような意図を有しておらず、「該積層体上」という記載に懸念が生じるとしてもこれを払拭する訂正が思い浮かばなかったのであろうか。

 例えば、下記のように訂正していれば、除く対象の構成が「積層体」の外に設けられる構成であると解されることはなく、懸念は払しょくされるはずである。下記の訂正は1~2分で思い付いたが、大日本印刷が、意図的(戦略的)に「該積層体上」という言葉を選んだか否かは定かではない。

適切な訂正請求項
 少なくとも2層を有する積層体であって、
 前記2層のうちの第1の層が、2軸延伸樹脂フィルムからなり、前記2軸延伸樹脂フィルムを構成する樹脂組成物が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含み、添加剤をさらに含んでなり、前記ポリエステルが、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸であるバイオマス由来のポリエステルと、前記ジオール単位が化石燃料由来のエチレングリコールであり、前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のテレフタル酸である化石燃料由来のポリエステルとを含んでなり、前記2軸延伸樹脂フィルム中に前記バイオマス由来のポリエステルが90質量%以下含まれ、
 前記2層のうちの第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなり、且つ、バイオマス由来の原料を含む樹脂材料を含まないことを特徴とする、積層体(但し、前記2層の上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるものを除く)。

※「設けられてなるもの」→「設けられてなる該積層体」でもよい。後者の方がより明確であり好ましいと思うが、本質部分ではないため元の記載をなるべく踏襲した。

「除くクレーム」を使うときの学び

 本件の事例から「除くクレーム」を使うときに留意すべきと言える事項は、以下の通りである。

 まず一つに、除こうとする構成が、発明の対象(物や方法)との関係で、「内的除外」「内在型の外的除外」「外在型の外的除外」のどれに該当するかを、実質面から考慮すべきということである。
 本件では、発明の対象である「積層体」との関係で、除こうとする構成である「蒸着膜及びガスバリア性塗布膜」は、実質的にみれば積層体の「層」に該当するのであるから、形式的な記載である「該積層体上」という文言から内外を区別することに意味はなく、本件の「除くクレーム」は「内在型」であると判断された。

 次に、「除くクレーム」の実質的な類型を把握した上で、「除くクレーム」の具体的な記載が、該当する類型と整合した記載になっているかを確認すべきということがいえる。
 本件のように、実質的に「内在型」の「除くクレーム」を、その文言上「外在型」と誤解されかねないような記載で表現してしまうと、特許庁において訂正が認められず、無用な取消訴訟をする羽目になる(時間とコストの無駄)。
 また、仮に特許庁において訂正が認められても、「明確性要件」や「サポート要件」の問題を抱えることになり、結局は無駄な作業が増えることになりかねない。

 類型を意識することができれば、その類型との関係で、記載が適切かどうかの判断もしやすくなるだろう。他の類型になっていないかという観点で確認をすればいいのである。

 最後に、請求項がオープンクレームかクローズドクレームかも確認しておくに越したことはない。オープンクレームであれば使用できる類型に制限はないが、クローズドクレームである場合には、「内在型の外的除外」は認められない可能性が高いことに留意すべきである。

3-3.その他

新規事項についての判断

 本件で、知財高裁は、「除くクレーム」の議論の本質である「新規事項」に該当するか否かについても判断している。
 しかしながら、率直に言わせてもらえば、この点についての知財高裁の判断プロセスは、妥当なものとは言えないだろう。具体的な知財高裁の判断は以下の通りである。

知財高裁の判断(判決より抜粋。下線は付記)
「仮に、本件において、異議手続で審理・判断されていない新規事項の追加の有無について審理・判断することができるとしても、訂正事項2は、新規事項を追加するものとは認められない。
 すなわち、訂正が、当業者によって,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものと解すべきところ、訂正事項2によって「該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるもの」を除外することにより、新たな技術的事項が導入されるわけではなく、新規事項が追加されるものではない。
 本件発明の課題は、バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルを含む樹脂組成物からなる層を有する積層体を提供することであって、従来の化石燃料から得られる原料から製造された積層体と機械的特性等の物性面で遜色ないポリエステル樹脂フィルムの積層体を提供すること(【0008】)であるが、上記除外によってこの技術的課題に何らかの影響が及ぶものではない
 被告は、前記第3の1⑵アのとおり、訂正事項2は、本件発明の課題に、引用文献の課題解決手段である「該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜」を追加することで新たな技術的事項を追加し、その追加した事項を前提に、それを除くとするのであるから、新たな技術的事項を導入するものである旨主張する。
 しかし、訂正事項2による除外がされて残った技術的事項には、本件訂正前と比較して何ら新しい技術的要素はないから、被告の主張は採用できない。
 その他被告が主張する点も、前記イにおいて既に判示したところに照らせば、いずれも採用できない。」

 このように、知財高裁は、新規事項にあたるか否か、つまり、新たな技術的事項を導入するものであるか否かを判断するための考量要素として、「本件発明の技術的課題への影響の有無」と「新しい技術的要素の有無」を挙げ、技術的課題に影響がないことと、新しい技術的要素がないことを根拠に、新規事項にあたらないとの結論を導いている。

 この判断手法は、ソルダーレジスト大合議判決にも通ずる点があるだろう。しかしながら、ソルダーレジスト大合議判決において、審理の対象となった「除くクレーム」の類型は「内的除外」である。

 「内的除外」の除くクレームは、請求項の具体的(有形的)な構成に対して直接的に制限を加える。つまり、請求項に記載されている有形かつ具体的な構成自体が、「除くクレーム」によって、その権利範囲を狭められるといえる。

 それでは「外的除外」の場合はどうだろうか

 「外的除外」の除くクレームは、請求項の具体的(有形的)な構成とは別の構成を有することを制限するため、請求項に記載されている有形かつ具体的な構成自体の権利範囲には変化がない

 例えば、構成Aがa1とa2の2つの選択肢を有していた場合、「構成A(但し、a1を除く)」という内的除外の除くクレームでは、もともとa1もa2も含まれていた構成Aの権利範囲が、a1を含まずa2のみを含む範囲へと変わる。
 一方で、例えば、構成Aがa1とa2の2つの選択肢を有していた場合、「構成Aを有する(但し、構成Bを有する場合を除く)」という外的除外の除くクレームでは、a1もa2も含むという構成Aの権利範囲には変化がない。

 特許請求の範囲に記載されている構成は、発明の課題を解決することのできる構成である。(そうでないとするとサポート要件違反である。)
 従って、外的除外の除くクレームは、特許請求の範囲に記載されている構成そのものの権利範囲には何らの影響も与えないのであるから、このような外的除外によって「技術的課題に何らかの影響が及ぶ」ことはあり得ない
 つまり、知財高裁が、判断の考量要素とした「本件発明の技術的課題への影響の有無」については、「外的除外」の除くクレームの場合、常に「影響はない」という結論にしかならず、実質的に判断の材料にはなっていないのである。(常に同じ結論しか出ないのであれば、これをYES/NOの判断の材料とすることに意味はない)。

 同様に、請求項に記載される技術的事項の外側を除外するのであるから、除外されて残る技術的事項は、除外される前の技術的事項と何ら相違がない。よって、「除外がされて残った技術的事項に、除外される前と比較して新しい技術的要素がない」ことも当然であり、「外的除外」の除くクレームにおいて、新しい技術的要素が生じることなどあり得ない

 

 このようにしてみると、本件で知財高裁が採った判断手法が、「外的除外」の除くクレームに対して実効性のある判断手法となっていないことは明らかだろう。
 この判断手法では、どのような発明であっても、どの技術分野であっても、除くクレームの内容がどのようなものであっても、「外的除外」の除くクレームは常に認められるという結論になるが、この結論自体が正しくないことは直感的に理解できるだろう。

本件の「除くクレーム」は進歩性の判断に影響を与えるか

 本件の「除くクレーム:は、発明に係る「積層体」が、第1の層及び第2の層の他に、少なくとも「無機酸化物の蒸着膜」と「ガスバリア性塗布膜」という構成を有する形態を除外するものである。

 このような除くクレームの目的は、異議申立てにおいて挙げられた主引例(引用文献4)との関係で、主引例が「優れたガスバリア性を有しつつ透明性を備え、耐衝撃性にも優れる、ガスバリア性積層フィルムおよびその製造方法を提供することを目的」とし、主引例が開示する発明が「基材上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるガスバリア性積層フィルム」であったことによる。

 つまり、主引例が、カスバリア性を課題としてガスバリア性積層フィルムの発明を開示していることから、本件発明では、「無機酸化物の蒸着膜」と「ガスバリア性塗布膜」を有する積層体を除いたのだろう。

 しかし、進歩性の判断は、当業者が容易に想到するか否かであり、主引例の発明者が容易に想到するか否かではない。

 何が言いたいかというと、確かに主引例は、ガスバリア性積層フィルムの発明を開示しているが、この引例に接した当業者が、「ガスバリア性積層フィルム」に限定された発明しか認識できないかというと、そうとは限らないだろうということである。

 実際の実務でも、主引用発明を認定するときに、主引例において課題の解決に不可欠な技術的事項を必ず含むように認定する必要はない。当業者は、引用文献を読んで、そこに記載されている技術的事項を認識できるのであり、課題の解決に不可欠な技術的事項しか認識しないわけではない。

 引用文献4では、本件発明の第1の層及び第2の層に相当する積層体の上に、さらに「無機酸化物の蒸着膜」と「ガスバリア性塗布膜」を設けることで、課題を解決しようとするが、裏を返せばそれは、「第1の層及び第2の層に相当する積層体」は、優れたガスバリア性を備えさせる対象の積層体であって、この積層体そのものが課題の解決に重要な構成ではないことを、引用文献4に触れた当業者は理解できるのではないだろうか。

 そうだとすれば、当業者は、「第1の層及び第2の層に相当する積層体」と「無機酸化物の蒸着膜及びガスバリア性塗布膜」とを、技術的に別離して認識することができ、当業者においては、「第1の層及び第2の層に相当する積層体」が「無機酸化物の蒸着膜及びガスバリア性塗布膜」と一緒でなければならないとは認識せず、「無機酸化物の蒸着膜及びガスバリア性塗布膜を除く積層体」であってもよいことを、十分に認識できるのではないかという疑問が残る。

 特許庁は、差し戻し後の取消理由通知で、「除くクレーム」の訂正が認められた請求項に対し、主引例となる新たな引用文献を挙げて、進歩性がないと判断している。

 しかしながら、上記のようにもう一歩踏み込んで進歩性の有無を検討していれば、新たな引用文献を挙げるまでもなく、進歩性がないという結論を導く途はあったようにも思える。

コメント

タイトルとURLをコピーしました