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拒絶理由対応のすすめ

拒絶理由対応のすすめ 第20回 ”権利化断念出願シリーズ(2)”

題材について

題材の選定条件:審査請求がされ、拒絶理由通知が出されたが、これに応答することなく拒絶査定が出された案件

例1:審査経過が「審査請求 ⇒ 拒絶理由通知 ⇒ 拒絶査定」
例2:審査経過が「審査請求 ⇒ 拒絶理由通知 ⇒ 意見書/補正書 ⇒ 拒絶理由通知 ⇒ 拒絶査定」

題材:特願2020-189937
出願人:矢崎総業株式会社 トヨタ自動車株式会社
代理人:特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
発明の名称:導電モジュール

審査記録
 2023年 9月 6日 審査請求
 2024年 9月 4日 拒絶理由通知(1回目)
    同年 9月24日 意見書のみ提出
    同年12月25日 拒絶理由通知(2回目)
 2025年 5月21日 拒絶査定

検討対象:2回目の拒絶理由通知
拒絶理由:29条2項(進歩性) 36条6項2号(明確性)

簡単な概要

 今回は、1回目の拒絶理由通知に対して頑張って「意見書のみ」で対応し、2回目の拒絶理由通知が出され、そのまま応答せずに拒絶査定が来たという、割と珍しい案件があったので選んでみた。

 本願の請求項1は以下の通りである。

【請求項1】
  可撓性を持たせた複数の導電体及び絶縁体による平らな積層体が設けられ、配列方向に並べられた複数の電池セルに対して前記導電体を電気接続させる導電部品と、
  全ての前記電池セルの内の温度検出対象に対して設けられ、温度検出対象となる前記電池セルの温度を検出するサーミスタと、
  温度検出対象となる前記電池セルの熱を前記サーミスタに伝える伝熱具と、
  を備え、
  前記導電部品は、複数の前記導電体が設けられている主体と、前記主体から前記サーミスタ用の前記導電体を前記絶縁体と共に分岐させた分岐体と、を有し、
  前記分岐体は、前記サーミスタが載せ置かれ、前記サーミスタを前記サーミスタ用の前記導電体に対して物理的且つ電気的に接続させる電気接続部を有し、
  前記伝熱具は、環状部の内部空間に前記サーミスタを配置させる第1伝熱部材と、前記内部空間を埋めて前記環状部の熱を前記サーミスタに伝える第2伝熱部材と、を備え、
  前記第1伝熱部材は、前記電池セルの外壁面に対して接触状態で固定させる固定部と、前記固定部に対して前記外壁面から離れる方向にオフセットさせ、前記電気接続部に対して物理的に接続させる前記環状部と、を有することを特徴とした導電モジュール。

 1回目の拒絶理由通知では、29条1項3号及び2項(新規性、進歩性)の拒絶理由が挙げられ、主引例として挙げられた引用文献1は特開2020-148590号公報であった。2回目の拒絶理由通知では新たに引例1として国際公開第2020/054305号、引例2として国際公開第2016/042732号、引例3として特開2020-102436号公報が引用された。全てが新たに引用された文献のため、1回目の拒絶理由については解消したものの、審査官が新たな引例により、改めて進歩性がないと判断したものといえる。

 なお、本願は、拒絶理由通知の1回目と2回目で審査官が異なる。1回目の拒絶理由通知では、特許庁審査官は塩谷 領大であったが、2回目の拒絶理由通知では吉川 潤になっている。そして、1回目の拒絶理由通知と2回目の拒絶理由通知の内容をぱっと見すればわかるが、拒絶理由の説明の質が明らかに違う。
 1回目の拒絶理由通知は、よくある感じの拒絶理由の説明だが、進歩性判断の各ステップをきちんと説明することなく、ざっくりとした質の低い拒絶理由である。一方で、2回目の拒絶理由通知では、引用発明の認定から、相違点の特定、各相違点に対して容易に想到することの論理付けが順序立てて説明されている。

 審査官の質(キャリアや性格)の違いなのか、1回目の拒絶理由通知が杜撰だったから本気を出したのか、その辺りは定かではないが、審査官が変わってしまったのは運が悪かったかもしれない(1回目の応答が一か月以内なので決して期限ぎりぎりの応答ではないが)。
 そして、この2回目の拒絶理由通知に対しては応答せず、拒絶査定が来ているため、2回目の拒絶理由通知に対しては権利化を断念したものと予想される。

 果たして、本願は、拒絶理由を解消することが困難であり、審査官の判断に承服するしかないのか。この点を検討していく。

検討の公開まで

 「拒絶理由対応のすすめ」は、実際に検討された上で、記事の詳細を読む方が、スキルアップに効果的かもしれません。まずはご自身で検討してみてから記事を読みたいという方がいることも想定し、具体的な検討の詳細は、記事のアップから期間をあけて、8月31日に公開する予定です。
 また、以下の「応答方針の検討」をご覧になる前に、「拒絶理由対応の本質」を読まれることをお薦めします。こちらを読んで頂いた上で以下の記事を読まれる方が、理解が深まると思います。
 以下の「応答方針の検討」には、応答方針に至るまでの思考過程と、意見書案文を載せています。

応答方針の検討(結論:補正無しで応答できる) 公開予定8/31~9/30

 応答方針の詳細については、2025年8月31日に公開予定(会員のみ閲覧可)

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