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権利化能力の重要性を考える No1. 特許6474089号

ビジネスのための特許とは ~タイミー特許からの考察~ Part2

はじめに

 本記事はPart1からの続編のため、読まれていない方は是非ともPart1記事をお読みいただきたい。

 Part1では、特許権者「株式会社タイミー」が有する特許第6474089号(以下、「タイミー特許」と呼ぶ。)が、ビジネス視点でみたときに、どれくらい有用といえるかについて考察した。
 実際のビジネスを考えると、取得できた内容の権利は、「株式会社タイミーのビジネスを守り、ビジネスに優位性を生み出し、ビジネスを成長させる(利益を増やす)ような特許」として、驚愕といえるほどの特許とは言えないのではないかというのが私個人の見解である。

 今回のPart2は、株式会社タイミーのビジネスにもっと貢献できるといえるような特許権を取得できる可能性はあったかを考察する。

 どこの特許事務所に依頼しても得られる結果=特許権という権利の内容は同じというわけではない。権利化能力には個人差があり、権利化能力の違いは当然ながらあなたの手にする特許権に違いをもたらすものである。

 これ自体は理屈として理解できているにしても、権利化能力の差による特許権の内容の違いはビジネスに大きな影響を与えるほどのものではない、と考えている方が多いのではないだろうか。

 しかし、その認識が合っているか否かは、この記事を読んでから考えてみて欲しい。

権利化能力の重要性

 ビジネスのコアがどこにあるかを見い出せても、そのコアを守る権利を取得することができなければ、特許権に大きな価値を見出すことは難しい。

 たとえ出願時に作成された請求項が良い出来栄えであったとしても、結果的に得られる権利がビジネスのコアから離れてしまっては、出願時の満足はぬか喜びに終わってしまうという結末にもなり得るのである。

 権利の内容(特許権の権利範囲)は、発明の内容だけで決まるものではなく、【発明内容×権利化能力】で決まるものであり、その意味では【発明者と実務家】の共同作業とも言い表すことができよう。

 例えば、あなたの発明それ自体が非常に秀でたものであって、どの弁理士に依頼しても良い特許が取れるというケースも理論上はあり得る。この場合には、権利化能力に秀でた弁理士を探す必要もなく、リーズナブルな弁理士に依頼するのが最適解ということになる。

【権利内容】=【発明内容×権利化能力】>α(満足する権利)

 この式で見ると、発明内容の数値が高いため、権利化能力の数値の高低によらず(最低値であっても)αを超える場合と捉えることができる。
 しかし現実的には、このようなケースは極めて稀であろうし、企業がこのような優れた発明の出現にだけ頼っていては、継続的に知財で事業を保護することは不可能であろう

 企業が持続するには、一発屋ではなく、継続的な成長が必須であり、そうだとすれば特許(発明)も、一発(優れた基本特許)の恩恵は享受しつつも、一発屋に終わらず継続的成長を支えるものを目指さなければならないし、もっといえば、ラッキーな一発がなくても継続的成長を支えられるものを目指さなければならない。

 現代社会においては、誰も考えたことのない全くの新規なビジネスというものはおよそ存在しないだろう。似たようなことを考える人は他に存在しており、似たようなことに取り組んでいる者がいるかもしれない。いずれにせよ、大枠的なモデルは既に出来上がっていることがほとんどであり、このことは、大枠的なモデルを特許で押さえることが難しいこと、言い換えれば、優れた基本特許を取得することが困難であることを示している。

 多くのスタートアップ企業でさえ、目指すところは、全くの新しい事業やビジネスではない。既に似たような製品やサービスが存在する中で、他にはない「市場ニーズに刺さる特徴的なコンセプト」を打ち出し、これを社会実装することで事業の成功を目指しているのである。

 だからこそ、積極的に狙うべき特許は、そのビジネスにおいて誰もがやらざるを得ない基本特許ではなく、その事業領域で差別化を図るための「市場ニーズに刺さる特徴的なコンセプト」を押さえた特許である。このような特許は事業戦略を支える特許=ビジネスのための重要な特許になると言ってもよいだろう。

 事業が成功するかどうかは事業戦略やコンセプトの正しさにもよるが、少なくとも考えたコンセプトに間違いがなければ、特許によって他の模倣を排除して自らが信じたコンセプトを独占することができるのであり、経営者が進もうとする道の邪魔をさせない状況を、特許によってサポートすることができるのである。

 したがって、あなたが「ビジネスのための特許」を得るには、ビジネスのコアともいえる「市場ニーズに刺さる特徴的なコンセプト」を的確に捉え、これをうまく権利化できる弁理士に依頼をすることが重要なのである。

 既に述べた通り、私の考えに過ぎないが、タイミー特許はタイミーのビジネスを十分に保護してくれるものとは言い難いように思える。

 一方で、特許庁からの拒絶理由通知を受けて、他に権利が取れそうなポイントが見つからないならば、取れそうなところでの権利化を薦めるというのも代理人として間違いではないだろう。どんなに権利化能力が高くても、ビジネスのコアを押さえる特許の取得が難しいといえる先行文献が存在するならば、諦める他ないという事態は起こり得るのである。

【権利内容】=【発明内容×権利化能力】>α(満足する権利)

 この式で見ると、発明内容の数値が低いため、どれだけ権利化能力の数値が高くても(最高値であっても)αを超えない場合と捉えることができる。
 このとき、権利化を断念すればよいかというと、そんな単純な話でもない。例えば、企業が特許を保有していない場合、少なくとも特許権を保有することにメリットがあるという考えもあるだろうし、権利化を断念するか、希望する権利とは離れていても取れそうな権利を取得するかはクライアントが決めるべき事項である。そのため、弁理士が取れそうな権利があると考えつつ、顧客の事業保護にならないと勝手に判断して顧客にその考えを示さないとすれば、それは代理業の本質にはそぐわないだろう。

 このようにしてみると、弁理士が代理人のために全力で対応しているならば、結果が満足するものでないことは、弁理士の責任ではない。たとえ、他の弁理士に頼んでいれば満足する結果が得られていたとしても、このような事情は、弁理士側の責任ではなく、その弁理士に依頼した顧客側の自己責任なのである。

【権利内容】=【発明内容×権利化能力】>α(満足する権利)

 企業が満足する権利を得たいならば(その確率を上げたいならば)、権利化能力の高い弁理士を探し、その者に依頼を受けてもらわなければならない。  それゆえに、「ビジネス理解度+権利化能力」の高い弁理士はどこにいるのかを探すことが、ビジネスにおいても非常に重要になってくるのである。

考察する3つの請求項

 既にPart1記事でも触れたが、今回の記事では「タイミー特許」「Xが権利化を薦める請求項」の他、現在(2025年7月時点)の株式会社タイミーのビジネスを保護(実施をカバー)できているであろう請求項について考察していく。
 タイミー特許は実際に特許査定となっている特許であるが、残りの2つは実際に審査されたわけではないため、権利化についての100%の保証はない。しかしながらいずれも、私の実務経験上では、十分に権利化できる可能性のある発明(請求項)である。

 なお、本記事は、拒絶理由対応を検討するものではないため、私の挙げる「2つの請求項」について、審査経過で挙げられた拒絶理由通知から進歩性が否定されないと考える具体的な根拠はここでは語らない。
 しかし、当サイトの「拒絶理由通知のすすめ」で権利化能力を磨いている有料会員の方には、「拒絶理由対応のすすめ」の特別回として、ここで挙げた請求項に基づき進歩性を主張するための論理(意見書で主張すべき内容)を説明する予定である。

 当サイトは「知財の価値を追求したい者=知財実務をとことん磨きたい者」のためのサイトであるため、率直な意見をいうと、有料会員の方には、私がここで挙げる3つの請求項くらいは顧客に提案できるようになって欲しいし、それができるように権利化能力向上のサポートしていきたい。

 それでは、具体的な考察に入っていくことにする。(ここから先は無料会員(企業)向けのコンテンツになっているため、興味のある企業の方は無料の会員登録をご検討いただきたい。特許事務所の方は残念ながらここまでとなる。)

考察する3つの請求項
【タイミー特許の請求項1】
 求職者および雇用者間でのマッチングを支援するマッチング支援サーバであって、
 前記求職者が使用する求職者端末から送信された前記求職者が希望する勤務時間帯を少なくとも含む求職希望を受け付ける求職希望受付部と、
 前記求職希望受付部が受け付けた求職希望を、前記雇用者が使用する雇用者端末に提示する提示部と、
 前記提示された求職希望に対して送信された、前記雇用者端末から前記求職者へのアプローチを受け付けるアプローチ受付部と、
 前記アプローチを、前記求職者端末を介して前記求職者に選択させる選択部と、
 前記求職者の勤務に対する前記雇用者の勤務評価を登録する評価登録部と、
 前記求職希望受付部が、前記評価登録部に登録された勤務評価が所定の条件を満たす求職者から求職希望を受け付けると、前記受け付けた求職希望の勤務時間に応じて当該求職者に対して給与の前払いを行う支払部と、を備える
マッチング支援サーバ。

【Xが権利化を薦める請求項】
 求職者および雇用者間でのマッチングを支援するマッチング支援サーバであって、
  前記求職者が使用する求職者端末から送信された前記求職者が希望する勤務時間帯を少なくとも含む求職希望を受け付ける求職希望受付部と、
 前記求職希望受付部が受け付けた求職希望を、前記雇用者が使用する雇用者端末に提示する提示部と、
 前記提示された求職希望に対して送信された、前記雇用者端末から前記求職者へのアプローチを受け付けるアプローチ受付部と、
 前記アプローチを、前記求職者端末を介して前記求職者に選択させる選択部と、
を備えるマッチング支援サーバ。

【タイミーのサービスをカバーする可能性のある請求項】
 ???(請求項の詳細は後ほど)

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