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拒絶理由対応のすすめ

拒絶理由対応のすすめ 第24回 ”権利化断念出願シリーズ(6)”

題材について

題材の選定条件:審査請求がされ、拒絶理由通知が出されたが、これに応答することなく拒絶査定が出された案件

例1:審査経過が「審査請求 ⇒ 拒絶理由通知 ⇒ 拒絶査定」
例2:審査経過が「審査請求 ⇒ 拒絶理由通知 ⇒ 意見書/補正書 ⇒ 拒絶理由通知 ⇒ 拒絶査定」

題材:特願2023-190799
出願人:三菱電機株式会社
代理人:弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
発明の名称:手乾燥装置

審査記録(最終処分:拒絶)
 2023年11月 8日 審査請求
 2024年 3月 5日 刊行物等提出による通知書
       8月 6日 拒絶理由通知(1回目)
      10月 2日 意見書及び手続補正書の提出
 2025年 2月 4日 拒絶理由通知(2回目:最後)
       6月24日 拒絶査定

検討対象:2回目の拒絶理由通知
拒絶理由:17条の2第3項(新規事項)
     29条1項3号(新規性)及び2項(進歩性)

簡単な概要

 第24回の題材も、意見書のみ応答率の高い代理人の案件を選定した(権利化能力の高い事務所が諦めた案件をどうしても挑戦したくなってしまう)。今回の代理人は「弁理士法人高田・高橋国際特許事務所」で、なんと意見書のみ応答率は10%越の堂々4位/200事務所中である。
 しかも今回は、刊行物等提出による通知書が出されており、本件出願に係る発明の特許権を取得してほしくない第三者が存在する可能性が高い。つまり、出願人側としては、「是が非でも権利を取得したい!」と考える案件であろう。それなのに権利化を断念したのであるからこれほどまでに好奇心をそそる案件に手を付けないわけにはいかないのである。

 本願は、発明内容に比して、非常に長い明細書である。また、分割出願である。長い明細書を読むとわかるが、発明の名称である「手乾燥装置」は、いわゆるビルのトイレに設置してある手を乾かすために送風してくれるあの装置であり、本件のオリジナルの特徴はUV照射装置を備える点にある。参考までに親出願の出願時と登録時の請求項1を載せておく。

【親出願の請求項1(出願時)】
 手挿入空間を形成し、前記手挿入空間に対して開口する通気孔を有する手挿入部と、
 前記通気孔に流体連通し、前記通気孔から前記手挿入空間へ空気を吹き出すか、前記手挿入空間から空気を前記通気孔に吸い込むように構成された送風機と、
 光源を有し、前記光源により生成された紫外線を前記手挿入空間に照射するUV照射装置と、
 を備える手乾燥装置。

【親出願の請求項1(登録時)】
 手挿入空間を形成し、前記手挿入空間に対して開口する通気孔を有する手挿入部と、
 前記通気孔に流体連通し、前記通気孔から前記手挿入空間へ空気を吹き出すか、前記手挿入空間から空気を前記通気孔に吸い込むように構成された送風機と、
 光源を有し、前記光源により生成された紫外線を前記手挿入空間に照射するUV照射装置と、
 を備える手乾燥装置であって、
 前記UV照射装置は、前記光源が設置された基板と、前記基板と反対側から前記光源を覆い、前記紫外線を透過させる窓部と、前記基板と前記窓部との間に配置されたスペーサーとをさらに備え、
 前記スペーサーは、前記光源が生成する光のうち、少なくとも、放射強度が最も高い波長の光を反射するように構成されており、
 前記手挿入空間に面する表面は、第一領域と、第二領域とを有し、
 前記第一領域は、前記光源が生成する光のうち、放射強度が最も高い波長の光に対して70%以上の反射率を有し、
 前記第二領域は、前記光源が生成する光のうち、放射強度が最も高い波長の光に対して30%以下の反射率を有する手乾燥装置。

 そして、本願の出願時の請求項1は以下の通りである。

【本願の請求項1(出願時)】
 サイドカバーが側方に配置された筐体と、
 手挿入空間を形成し、前記手挿入空間に対して開口する通気孔を有する手挿入部と、
 前記手挿入空間に対して開口する吸引口と、
 前記通気孔および前記吸引口に流体連通し、前記通気孔から前記手挿入空間へ空気を吹き出すように構成され、前記手挿入空間から空気を前記吸引口に吸い込むように構成された送風機と、
 前記吸引口に流体連通し、前記サイドカバーと前記手挿入空間との間に形成される部分を有する吸引風路と、
 を備えた手乾燥装置。

 このように、分割出願で狙っている権利には、当初の特徴部分である”UV照射装置”はなくなっている。また、請求項の内容を見ても、本来手乾燥装置が備えている基本的な構成に係る発明特定事項だけが記載されており、よりチャレンジングな権利の取得を狙ったものと推察できるだろう。親出願の審査過程ではこなかった情報提供(刊行物等提出による通知書)が本願でやってくるというのもわからなくはない。

 本願に対し、29条1項2項(新規性及び進歩性)を拒絶理由とする1回目の拒絶理由通知が出され、審査官は4つの引用文献を挙げた。これに対し、出願人は以下の通りに請求項1を補正した。

【本願の請求項1(補正後)】
 サイドカバーが側方に配置された筐体と、
 手挿入空間を形成し、前記手挿入空間に対して開口する通気孔を有する吹出口部を備えた手挿入部と、
 前記手挿入空間に対して開口する吸引口と、
 前記通気孔および前記吸引口に流体連通し、前記通気孔から前記手挿入空間へ空気を吹き出すように構成され、前記手挿入空間から空気を前記吸引口に吸い込むように構成された送風機と、
 前記吸引口に流体連通し、前記サイドカバーと前記手挿入空間との間に形成される部分を有する吸引風路と、
 を備え
 前記吹出口部は、前記手挿入部の挿入前部と挿入後部との少なくとも一方に配置され、
 前記吸引口は、前記手挿入部の両側の挿入側部に配置され、
 前記吸引口は、前記吹出口部よりも低い位置に配置され、
 前記吸引口は、前記挿入側部の下端に配置される手乾燥装置。

 補正後の請求項1に対して特許庁から2回目の拒絶理由通知(最後の拒絶理由通知)が出され、そこには、29条1項2項に加えて、17条の2第3項の新規事項の追加が挙げられた。出願人及び代理人は、なんとか権利を取ろうと、本願明細書に記載されている内容のギリギリのところまで攻めようとしたということであろう。そしてその攻めは、審査官に新規事項の追加と判断されるものだったということである。

検討の公開まで

 「拒絶理由対応のすすめ」は、実際に検討された上で、記事の詳細を読む方が、スキルアップに効果的かもしれません。まずはご自身で検討してみてから記事を読みたいという方がいることも想定し、具体的な検討の詳細は、記事のアップから期間をあけて、1月31日に公開する予定です。
 また、以下の「応答方針の検討」をご覧になる前に、「拒絶理由対応の本質」を読まれることをお薦めします。こちらを読んで頂いた上で以下の記事を読まれる方が、理解が深まると思います。
 以下の「応答方針の検討」には、応答方針に至るまでの思考過程と、応答案の概要を載せています。

応答方針の検討(結論:???) 公開予定1/31~2/28

方針の骨子

 

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