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分析シリーズ(権利化能力) 「意見書のみ応答率」の分布からみえる傾向の考察6

事務所規模からみる権利化能力の低い/高い特許事務所の集まりやすさ

概要

 ”意見書のみ応答率が低い特許事務所”は特許を取得する過程で権利を限定する対応(補正ありの対応)が多くなり、”意見書のみ応答率が高い特許事務所”は特許を取得する過程で権利を限定しない対応(補正無しの意見書のみ対応)が多くなるということは、意見書のみ応答=請求項はそのままで対応=権利を限定しない応答であることから直接的に導くことができるだろう。

 企業の皆様の中には、特許事務所を選定する上で、”安易に権利を限定して特許権の取得を図る”ような特許事務所は選びたくないと考える者も少なくないのではないだろうか。

 そこで今回、事務所の規模別に、意見書のみ応答率の低い特許事務所や意見書のみ応答率の高い特許事務所の数と割合を見たところ、下のグラフのような結果となった。(集計は、OA応答統計第一弾から第十四弾までの合計240の事務所を対象としている)
 なお、意見書のみ応答率の低い特許事務所は、最も意見書のみ応答率が低い値である「0%」の事務所を対象にしている(計21事務所)。また、意見書のみ応答率の高い特許事務所は、全体のおよそ上位10%である意見書のみ応答率が「7%以上」の事務所を対象にしており(計23事務所)、低い事務所と高い事務所とでだいたいの母数を揃えている。

 なぜ事務所の規模別にしたかというと、事務所の規模は、特許事務所の選定のしやすさにも影響してくるからである。

 規模の大きな事務所ほど多くのクライアントが付いており受任件数も多くなるため、コンフリクトの可能性(既に競合関係にある他社のクライアントになっている可能性)は高くなり、少数の依頼も頼みづらくなるのが顧客心理であろう。また、少数の依頼しか見込めない客に対して大事務所が優秀な人材をあてがうかと言われれば常識的にも信じ難い。
 一方で、多くの出願を依頼する企業も、必ずしも大事務所の品質に十分満足しているとは限らない。大事務所は、品質のばらつきは小さいかもしれないが、その分突出した実務家が多いわけではないというのもこの業界の実情であろう。真に優秀であるかはともかく、自身の能力に自信のある者は、独立開業しようとする傾向が高くなるからである。大企業であっても、大事な出願はお抱えの事務所に依頼したいと考えるところは決して少なくないはずで、お抱えの事務所を作るのには中小規模の特許事務所の方が向いているわけである。

 このように、企業が特許事務所を選ぶときには、事務所の規模も一つの判断材料になるはずであり、その意味では、本記事で提供する情報が、皆様の特許事務所選びの判断材料の一つになれば、非常に幸いである。

考察の要点

 今回の結果が示すものは非常にわかりやすい。グラフからは次のことがいえるだろう。

<件数でみると>
・「意見書のみ応答率」が低い特許事務所は、クラスEの規模の事務所に多い
「意見書のみ応答率」が低い特許事務所は、クラスAの規模の事務所の中にはない
・「意見書のみ応答率」が高い特許事務所は、クラスAとクラスBの規模の事務所の中にはほとんどない
<割合でみると>
「意見書のみ応答率」が低い特許事務所は、クラスEの規模の事務所に多い
「意見書のみ応答率」が高い特許事務所は、クラスCの規模の事務所に多い

特許事務所選びについて

 小さな規模の特許事務所の方が丁寧に対応してくれて質が高いのではないか

 企業の中にはこのように考える人も少なくないように思える。しかし、今回のグラフが示す結果は、その考えに当てはまるものではないかもしれない。”意見書のみ応答率の高い特許事務所の数”という点からみると、規模の小さな事務所ほど優位性を示すという結果にはなっていないからである。

 集計結果からは、今回の分類の中で最も規模の小さいクラスEの事務所から、意見書のみ応答率が0%の特許事務所が最も多く出てきており、その割合もクラス別で最も高い値となっている。

 なお、規模毎に対比をする上でより重要なのは「割合」である。

 規模毎に母数となる事務所の数が違っており、規模の大きい順にクラスAからクラスEへと分類しているが(詳細な分類方法はこちらから確認いただきたい。)、クラスAの規模の事務所数は18、クラスBは21、クラスCは35、クラスDは74、クラスEは92となっている。そのため、仮にクラス間で権利化能力に差がない場合であっても母数の多いクラスEからは権利化能力の高い事務所の数も低い事務所の数も多く出ることになる。

 グラフが示すクラス別の「意見書のみ応答率0%の割合」は、クラス別での「意見書のみ応答率0%の特許事務所との遭遇率」と捉えてもよい。

 この遭遇率から、最初にどの程度の規模の特許事務所にするかを絞り、そこからさらに具体的な特許事務所探しをするというアプローチがあってもよいかもしれない。企業がもし、遭遇率=リスクと捉えるならば「リスクミニマムな事務所規模の中から選ぼう」というアプローチも十分にありえるように思える。

 また、今回の結果の非常に興味深い一つの傾向は、「意見書のみ応答率0%の特許事務所を選ばないことを重視するならば、クラスAの規模の事務所を選ぶのが最も無難である」というところかもしれない。この結果は、私の予想に反するものであり、個人的には驚きも大きかった。大きな事務所にまで成長してこれたのにはそれなりの理由があるということかもしれない。

意見書のみ応答率が高い事務所の遭遇率は、クラスCの規模が最も高く17%という数字はつまり「6件に1件は権利化能力の高い事務所に当たる」と捉えなおすことができる。(6件に1件を多いと取るか少ないと取るかはわからないが)

 意見書のみ応答率の高さでみれば、遭遇率はクラスC、クラスE、クラスDの順だが、一方で、意見書のみ応答率の低さでみれば、遭遇率はクラスE、クラスB、クラスDの順となっている。クラスEの事務所は、10%弱の確率で意見書のみ応答率の高い事務所に当たる一方で、13%超えの確率で意見書のみ応答率0%の事務所に当たる。

 リスク(権利化能力の低い特許事務所にあたってしまう)と期待(権利化能力の高い特許事務所についてもらえる)を結合させるならば、意見書のみ応答率の高い特許事務所の割合と高い特許事務所の割合の大小関係を見るのも参考になるだろう。大小関係は、以下のように捉えなおすことができる。

リスクが期待を上回る
意見書のみ応答率の低い特許事務所の割合 > 意見書のみ応答率の高い特許事務所の割合

期待がリスクを上回る
意見書のみ応答率の低い特許事務所の割合 < 意見書のみ応答率の高い特許事務所の割合

 二つのグラフを対比すると、リスクが期待を上回っているのは、クラスB、クラスEであり、期待がリスクを上回っているのはクラスA、クラスC、クラスDである。

 私は以前の記事で、事務所選びをするならクラスCかDから選んだ方がよさそうと述べたが、今回の結果は、この考察を後押しする結果となっているだろう。但、事務所規模は、それだけで品質を保証するものではなく、どの規模であっても、相対的に権利化能力に優れた事務所もあればそうでない事務所もあるだろう。あくまで、当たりの付けやすさに使う程度であり、迷った時のおまじない程度の傾向かもしれない。

 

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