”意見書のみ応答率”の低い特許事務所の数
プロローグ
”意見書のみ応答”は、なるべく権利(請求項)を限定しない応答の典型であり、この応答率の高さは権利化能力の高さを評価する一つの判断材料になる。(もちろん、これだけで権利化能力を直接的に評価することはできないが)
特許事務所ごとの”意見書のみ応答率”の分析は、特許事務所の実力を客観的かつ相対的に評価するための判断材料がないという現状の課題から、公益的な目的で始めた分析である。
分析対象の特許事務所の数は計240となり、超大手の事務所を除けば、ある程度の規模の特許事務所は分析対象に含むことができたように思う。
この分析を終えて見えてきたのは、特許事務所間で権利化能力は決して横並びというわけではなく、相対的に見れば権利化能力に優れた特許事務所とそうでない特許事務所の差が存在しているということ(詳しくは傾向の分析1をご覧いただきたい。)、”意見書のみ応答率の高い特許事務所”は一部に過ぎないこと、といった分析する前からある程度予想できたことだけではない。
私の予想以上に”意見書のみ応答率の低い特許事務所”は多かった
取得される権利(特許権)が限定(制限)された内容になってしまうというのは、一つの特許権を大事に扱う企業にとっては大きな問題のはずである。
確かに、一つの特許出願に対し、取得できた特許権の内容が過度に限定されたものかどうかは、究極的には裁判までいかないとわからないことではある。しかし、そのような理由から「事務所の能力は相対的に判断できない」と諦めてしまっては企業のためにはならないだろう。だからこそ、一つの特許出願(=一人の担当弁理士)ではなく、事務所が扱っている特許出願の母集合から傾向を評価するというアプローチで”事務所単位”での評価を行うことにも一定の価値があるように思える。
企業の皆様が依頼する相手は”事務所”なのであり、個々のばらつきはあっても、その事務所の総合力が”事務所単位の評価”には表れてくるものであろう。
”意見書のみ応答率”の低い特許事務所の数
240事務所中、”意見書のみ応答率が0%”の特許事務所は21あった (1割弱)
この数字は、私の予想をはるかに超えるものであった。
”意見書のみ応答率が0%である”というのは、集計対象の中で応答した全ての案件において補正(権利の限定)がされているということである。
(なお、今回の分析は、特許庁が発行する年間の審査見通しリストの中から一定期間に絞って案件を選定しているため、全ての案件を対象にはしていないため、ここで0%となったことが、実際に全件において0%であることを示していないことには注意いただきたい。しかし、対象となる件数にあまり大きな差が出ないようにし、偏りなく案件を抽出する努力はしており(満遍なく案件を抽出するために審査見通しリストを使っており)、「全件が対象になっていない」というのも240全ての特許事務所に共通した条件である。)
例えば、企業の皆様が無造作に特許事務所を選定した場合、1割弱の確率で(正確には8.75%)、”意見書のみ応答率0%”の特許事務所に当たるということである。
240事務所中、”意見書のみ応答率が1%未満”の特許事務所は55あった (2割強)
”意見書のみ応答率が1%未満である”というのは、権利を限定しない対応が、100件中1件にも満たないということである。言い換えれば、100件中99件以上が、権利を限定する対応といえる。
例えば、企業の皆様が無造作に特許事務所を選定した場合、2割強の確率で(正確には22.92%)、”意見書のみ応答率1%未満”の特許事務所に当たるということである。
240事務所中、”意見書のみ応答率が2%未満”の特許事務所は88あった (4割弱)
主に審査官や審査部をターゲットに審査情報を集計・分析して有益な情報を提供する審査官ラボさん(X(旧ツイッター)でのアカウント名称)によれば、意見書のみ応答率の全体平均は「50~60件に1件」とのことで2%以下ということになるため、平均を2%と仮定すると、”意見書のみ応答率が2%未満である”というのは、平均より低い意見書のみ応答率ということになる。
例えば、企業の皆様が無造作に特許事務所を選定した場合、4割弱の確率で(正確には36.67%)、”意見書のみ応答率2%未満”の特許事務所に当たるということである。
まとめ
今回は、”意見書のみ応答率の低い特許事務所”の数の多さについて紹介した。
皆様はこの結果をどう受け取っただろう。
「思った以上に多かった」のか、「だいたい予想していた範囲であった」のか、「思ったよりも少ない」と感じたのか。
冒頭述べたように、私にとってこの結果は「予想以上に多かった」と感じるものであった(もっと少ないと思っていた)。無造作に選ぶと4割弱の確率で平均以下に当たるとすれば、企業の方は、無造作に「特許事務所」を選ばない方がいいということになる。
そもそも、特許事務所選びを無造作に行う企業はいないだろう。ホームページを見てみて感じが良さそうな特許事務所かどうかを判断するといったことはされているはずである。しかし、ホームページの作りを見ても4割弱のリスクが確実に下がるというわけではない。企業の皆様が特許事務所を選ぶときは、客観的な評価指標も取り入れて、総合的に判断するのがよいだろう。
本当に市場のマーケットリーダーを狙っているならば、特許出願は遊びではなく、命懸けで取り組むべきである。
特許の独占排他権が活かされるのは、市場創成期(導入期)ではなく、市場が成長した段階(成長期以降)であるが、その段階で使える特許権の多くは、市場創成期に出願されたものである。市場創成期は企業にとって最も慌ただしく、市場を創り上げるための努力に全精力を向けている状況で、知財を疎かにしがちになるかもしれないが、市場創りが成功した先のビジョンを考えれば、市場創成期こそが、最も重要な特許出願期なのである。
特に、中小零細やスタートアップ企業などは、人的資源も限られていることから、「特許事務所選び」などという些事に(本当は決して些事ではないが)手間暇をかけていられないと考えている方も多いかもしれない。人にも時間にも限界がある中で、少しでも効率的に、そして、客観的・相対的に「特許事務所選び」を行うために、当サイトが提供する情報が役立てば幸いである。(もちろん、当サイトの情報だけを鵜呑みにせず、いろんな側面から見ていって欲しい)
当サイトでは、企業の皆様の「特許事務所選び」に少しでも役立つ情報をお届けすることを目的に、無料会員に登録いただいた方を限定に、240事務所の”意見書のみ応答率”のデータを提供しているため、特許事務所選びに当サイトの「意見書のみ応答率のデータを使いたい」という企業の方は、無料会員の登録を検討いただくとよいだろう。無料会員の方はコチラからデータを見ることができる。


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