題材について
題材の選定条件:審査請求がされ、拒絶理由通知が出されたが、これに応答することなく拒絶査定が出された案件
例1:審査経過が「審査請求 ⇒ 拒絶理由通知 ⇒ 拒絶査定」
例2:審査経過が「審査請求 ⇒ 拒絶理由通知 ⇒ 意見書/補正書 ⇒ 拒絶理由通知 ⇒ 拒絶査定」
題材:特願2021-565479
出願人:出光ユニテック株式会社
代理人:特許業務法人平和国際特許事務所
発明の名称:積層体、成形体及び成形体の製造方法
審査記録(最終処分:拒絶)
2023年 6月 8日 審査請求
2024年 6月25日 拒絶理由通知(1回目)
8月26日 意見書及び手続補正書の提出
11月12日 拒絶理由通知(2回目:最後)
2025年 4月 1日 拒絶査定
検討対象:2回目の拒絶理由通知
拒絶理由:36条6項第1号(サポート要件)
簡単な概要
第25回の題材は、技術分野で選択してみた。電気や機械分野の案件が多かったため、今回は、化学(材料系)の技術分野を選択してみた。そして、拒絶理由はサポート要件。化学で特に難しいと思われる拒絶理由である。(そもそも電気や機械分野ではサポート要件違反の拒絶理由はそれほど多くないだろう)
対象特許の請求項1は以下の通りである。
【請求項1】
第1の樹脂層、第2の樹脂層及び第3の樹脂層をこの順で含む積層体であって、
前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層はポリプロピレンを含み、前記ポリプロピレンは、それぞれ、長鎖分岐構造を有し、かつ、130℃での結晶化速度が2.5min-1以下であり、
前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とは組成が異なり、
前記第3の樹脂層は、融点が125℃以下の接着剤を含む、
積層体。
これに対して、1回目の拒絶理由通知で29条の拒絶理由が出されたが、出願人は請求項1を補正せず、従属項を新たに追加する補正で対応した。
出願人の応答に対して、2回目の拒絶理由通知では、29条の拒絶理由は出されず(よって、出願人は、補正せずに意見書のみで29条の拒絶理由は解消したといえる。)、新たな拒絶理由としてサポート要件違反が出された。
審査官のサポート要件についての拒絶理由は以下の通りである。
「請求項1に係る発明は、第1の樹脂層及び第2の樹脂層が含有するポリプロピ レンが、130℃での結晶化速度が2.5min-1以下であることを特定して いる。
ここで、本願発明が解決しようとする課題として、成形時のドローダウンを抑 制でき、被着体との接着強度に優れ、かつ優れた外観の成形体を製造する積層体 を得ることが挙げられる([0009]参照)。
そして、本願実施例1-3においては、第1及び第2の樹脂層が含有するポリ プロピレンの130℃での結晶化速度が0.1min-1である態様において、 上記課題、特に優れた外観の成形体が得られることが確認されている(表1等参 照)。
一方、本願比較例1において、第1及び第2の樹脂層が含有するポリプロピレ ンの130℃での結晶化速度が2.7min-1である態様において、成形体の 白化防止性、色差変化、表面光沢変化に劣ることが記載されている(表1等参照 )。
ここで、130℃での結晶化速度が、0.1min-1であるものが良好な結果であったとして、一方で2.7min-1では結果が劣っていた時に、2.5 min-1以下が有効であるとするのは、実験的な検証がなされているとはいえ ず、合理的な根拠のあるものとはいえない。
そうすると、請求項1-17に係る発明は明細書の記載により十分に裏付けら れたものではない。」
出願人は、この拒絶理由に対して応答せず、最終処分の拒絶が確定した。
なお、実施例及び比較例に関する表は以下の通りである。(本願明細書より抜粋)

検討の公開まで
「拒絶理由対応のすすめ」は、実際に検討された上で、記事の詳細を読む方が、スキルアップに効果的かもしれません。まずはご自身で検討してみてから記事を読みたいという方がいることも想定し、具体的な検討の詳細は、記事のアップから期間をあけて、3月3日に公開する予定です。
また、以下の「応答方針の検討」をご覧になる前に、「拒絶理由対応の本質」を読まれることをお薦めします。こちらを読んで頂いた上で以下の記事を読まれる方が、理解が深まると思います。
以下の「応答方針の検討」には、応答方針に至るまでの思考過程と、応答案の概要を載せています。


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