題材について
題材の選定条件:審査請求がされ、拒絶理由通知が出されたが、これに応答することなく拒絶査定が出された案件
例1:審査経過が「審査請求 ⇒ 拒絶理由通知 ⇒ 拒絶査定」
例2:審査経過が「審査請求 ⇒ 拒絶理由通知 ⇒ 意見書/補正書 ⇒ 拒絶理由通知 ⇒ 拒絶査定」
題材:特願2020-211381
出願人:イビデン株式会社
代理人:特許業務法人朝比奈特許事務所(※公開公報の名称をそのまま使用しています)
発明の名称:配線基板
審査記録
2023年 9月27日 審査請求
2024年 7月 9日 拒絶理由通知(1回目)
同年10月16日 意見書及び手続補正書の提出
同年12月 3日 拒絶理由通知(2回目)
2025年 4月22日 拒絶査定
検討対象:2回目の拒絶理由通知
拒絶理由:29条2項(進歩性)
簡単な概要
第23回の題材は、代理人が「朝比奈特許事務所」のものを選ぶことにした。弁理士法人朝比奈特許事務所は、意見書のみ応答率が高い特許事務所であり(応答率8%越えの事務所で、現時点で上位10%に入っている)、権利化能力に優れた特許事務所と考えられるため、そのような事務所が代理しながらも最終的に権利化を断念した案件に好奇心に駆られた。
本願は、配線基板に関する発明で、出願時の請求項1は以下の通りである。
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に形成されている第1導体層と、
前記第1絶縁層および前記第1導体層上に形成されているソルダーレジスト層と、
前記第1絶縁層を介して前記第1導体層と反対側に形成されている第2導体層と
を含み、第1面および前記第1面の反対面である第2面を有する配線基板であって、
前記第1導体層が、導体パッドを含み、
前記ソルダーレジスト層が、前記導体パッドの表面の全面を露出させる開口を有し、
前記導体パッドの外周に沿った領域に第1ビアが接続されており、
前記第1ビアは、前記第1絶縁層を貫通して前記第2導体層の導体パターンに接続されている。
参考までに、本願の図を載せておく。下図の図1の赤枠部分がポイントとなっており、これを拡大した平面図と断面図がそれぞれ下図の図2A及び図2Bであるものと考えられる。

これに対し、1回目の拒絶理由通知では、進歩性と明確性(誤記)の拒絶理由が挙げられた。なお、進歩性では2つの引用文献があげられ、主引用発明を開示する特開2010-45134号公報と、副引用発明を開示する特開2016-51803号公報が挙げられている。
出願人は、1回目の拒絶理由通知に応答して、請求奥を補正した。補正後の請求項1は以下の通りである。
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に形成されている第1導体層と、
前記第1絶縁層および前記第1導体層上に形成されているソルダーレジスト層と、
前記第1絶縁層を介して前記第1導体層と反対側に形成されている第2導体層と
を含み、第1面および前記第1面の反対面である第2面を有する配線基板であって、
前記第1導体層が、導体パッドを含み、
前記ソルダーレジスト層が、前記導体パッドの表面の全面を露出させる開口を有し、
前記導体パッドの外周に沿った領域に第1ビアが接続されており、
前記第1ビアは、前記第1絶縁層を貫通して前記第2導体層の導体パターンに接続されており、 前記第1ビアの前記導体パッド側の径は、前記第1ビアの前記第2導体層側の径よりも大きく、 前記導体パッドの中心領域にビア導体が接続されており、前記ビア導体が前記第1絶縁層を貫通して前記第2導体層の導体パターンに接続されており、
前記ビア導体の前記導体パッド側の径は、前記ビア導体の前記第2導体層側の径よりも大きく、 前記ビア導体の前記導体パッド側の径は、前記第1ビアの前記導体パッド側の径よりも大きい。
この独立項に対して、2回目の拒絶理由通知(最後の拒絶理由通知)が発せられ、ここではさらに副引用発明を開示する引用文献が追加されている(特開2020-188072号公報)。補正によって(補正部分の発明の進歩性を否定するために)追加された文献のため、最後の拒絶理由通知となっており、適法といえる。
この最後の拒絶理由通知に対して出願人は応答せず、そのまま拒絶査定が出された。なお、1回目の拒絶理由通知での対応(意見書の内容)からも、出願人が積極的な権利化を望んでいたように思われ(それくらいに長めの文量できちんとした意見書が出されている)、やむなく権利化を断念した案件と推測している。
検討の公開まで
「拒絶理由対応のすすめ」は、実際に検討された上で、記事の詳細を読む方が、スキルアップに効果的かもしれません。まずはご自身で検討してみてから記事を読みたいという方がいることも想定し、具体的な検討の詳細は、記事のアップから期間をあけて、12月27日に公開する予定です。
また、以下の「応答方針の検討」をご覧になる前に、「拒絶理由対応の本質」を読まれることをお薦めします。こちらを読んで頂いた上で以下の記事を読まれる方が、理解が深まると思います。
以下の「応答方針の検討」には、応答方針に至るまでの思考過程と、応答案の概要を載せています。


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