分割要件(新規事項):【課題】欄以外に記載された課題が分割出願の実体的要件の判断に有利に働いた事例
令和5年1月23日(2023/1/23)判決言渡
#特許 #分割要件 #新規事項の追加
1.実務への活かし
・~出願まで #明細書の作成
明細書を作成する際には、【課題】欄だけでなく、明細書全体の中で、実施形態を構成する技術に対応する課題(=「~できる」などの作用効果の記載でよい。)をなるべく記載しておくことで、その後の分割出願における分割要件(実体的要件)あるいは新規事項の判断に有利に働くことがある。
従って、課題の記載の充実性は、分割出願によって取得できる権利の幅にも影響する。
・~権利化まで #分割要件 #新規事項の追加
補正した請求項や分割出願の請求項が新規事項の追加(分割要件違反)に当たるか否かについて審査官と争うときは、審査官が明細書の【課題】欄に記載された課題にこだわって明細書の文言の意味を解釈し、その上で、請求項が明細書の記載の範囲を超えていると判断していないかに注意する。
また、明細書全体からみて【課題】欄の記載とは別に請求項に係る発明の作用効果が記載されている場合には、本件で裁判所が示した下記の見解を挙げた上で、作用効果との関係から文言を解釈すれば請求項に記載された発明は新規事項を追加するものではないといった主張をするとよい(拒絶理由の解消に繋がり得る)。
∵知財高裁は新規事項に当たるか否かの判断において「原出願の出願当初の明細書等に記載された事項を明らかにするために発明の課題を認定するに当たっては、原出願(本件において検討すべきものは親出願)の当初明細書等の【発明が解決しようとする課題】欄、【発明の効果】欄の記載のみにとらわれることなく、明細書及び図面の全ての記載事項に加え、出願時の技術常識を考慮して課題を把握すべきであ」ると判断した。
2.概要
本件は、無効審判が不成立とされた審決の取消しを求める訴訟である。
パナソニック株式会社(以下、「パナソニック」という。)は、アイリスオーヤマ株式会社(以下、「アイリス」という。)が保有する特許第6145236号(発明の名称「LED照明装置」。以下、「本件特許」という。)の特許無効審判を請求した。
本件特許は、分割出願の第3世代であり、無効審判で争われたのは、分割要件(実体的要件)、新規性/進歩性である。また、新規性/進歩性に用いられた主引用文献は、分割要件違反により出願日が遡及しないことを前提として、原出願(本件では、親出願と呼ばれている。以下、原出願と親出願を同じ意味で使用する。)の出願日よりも後に公開された文献であった。
分割出願の実体的要件である「本件特許が原出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内であるか」について、明細書及び図面の記載に違反がないことについては両社に争いはない。
パナソニックが主張したのは、本件特許の請求項1及び2が、親出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内とはいえないというもので、これらの請求項における「着脱可能に」、「透光カバー」、「弾性部材」、「長尺状」との記載が具体的に争点となっている。
パナソニックの主張に対し特許庁は、本件特許の請求項1及び2に記載された事項は「原出願の当初明細書等に対し、新たな技術的事項を追加するものではないため、分割要件の違反はない」と判断した(無効審判の請求は成り立たないとの審決)。
これを不服としてされた本件訴訟において、パナソニックは、概ね以下のような反論を行った。
・親出願に「着脱可能に」を実現する実施例は1例しかなく、「着脱可能に」との上位概念化は、実施例以外の方法も全て含み得るため、新規事項の追加に当たる。
・親出願には「カバー」としか記載されておらず、本件発明が解決しようとする課題は「光のむらを抑えること」であり、光拡散性を有する「カバー」しか開示されていない。よって光拡散性の有無を問わない「透光カバー」は、新規事項の追加に当たる。
・「弾性部材」は、およそ弾性を利用した構成を全て含むように上位概念化するものであり、親出願の当初明細書等に明示的に記載されてもおらず、自明でもないため、新規事項の追加に当たる。
・親出願の当初明細書等には「帯状」と記載されており、「帯状」は矩形に限定されるところ、矩形に限定されない細長い状態を意味する「長尺状」は新規事項の追加に当たる。
本件で知財高裁は、パナソニックの主張を容れず、審決に誤りはないとした。また、知財高裁は、新規事項の追加について、ソルダーレジスト大合議判決の規範を踏襲し、新たな技術的事項を導入するものか否かを判断した。
また、この判断に際し、明細書の全体において複数の課題が記載され、そのうちの特定の課題に対応する構成が開示されている場合に、他の課題との関係で、親出願の出願当初の明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項をどのように認定すべきかについての考えを示した。
以下に、知財高裁の判断を抜粋する。(なお、「弾性部材」及び「長尺状」については、特に考察する点もなかったため割愛する。)
知財高裁の判断(判決から抜粋。一部省略、下線は付記)
「⑶ 本件特許の請求項1に記載の「着脱可能に」との事項について」
まず、親出願の当初明細書等に開示されていた課題について検討すると、親出願の当初明細書等には、…「LED照明装置Xからの光は輝度むらを生じやす」く、「この輝度むらが顕著であると」、「個々のLEDチップ92が視認できてしまう場合があ」り、「見る者が見栄えがよくないと感じてしまう」…という課題が示され、第9実施形態に関して、「光のムラを抑える」…という課題が開示されている。
しかし、親出願の当初明細書等には、多数の実施形態(第1ないし第24実施形態)が開示されており、そこで開示されている課題は、上記の課題に限られるものではない。すなわち、親出願の当初明細書等には、…という記載があり、これらの記載に鑑みれば、親出願の当初明細書等には、「LEDユニットを交換可能とする」ことが発明の課題として記載されていると認められる。
…この課題は、LEDユニットが「着脱可能に」取り付けられていれば解決可能なものであって、着脱可能とする構成について、特定の構成を採用しなければならないとする特別の要請があるとは認められず、具体的な構成まで特定しなければ解決できないということはなく、当業者であれば、技術常識に照らし、着脱可能とする適宜の方法を選択して解決することができるものと認められる。
そして、親出願の当初明細書等…には、LEDユニット2をマウント1の凹部10aにホルダ11の可撓部11bの弾性変形を用いて取り付け、取り外すことが記載されており、…には、LEDユニット2をマウント1の凹部に、ワイヤホルダ161を介して取り付け、取り外す構成が記載されている。そうすると、親出願の当初明細書等は、…複数の態様を開示しているということができ、これらの複数の取り付け、取り外す構成を包含する発明特定事項について、「着脱可能に」と特定することは、親出願の出願当初の明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるといえ、親出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内であるものといえるから、新たな技術的事項を導入するものとは認められない。
…原告は、…「着脱可能に」取り付けられるとは、ネジや磁石を利用した方法など、およそ取り付け、取り外しが可能な任意の構成を意味するものであるから、このような方法も全て本件発明1の技術的範囲に入る可能性が生じるとし、したがって、本件特許の請求項1に記載の「着脱可能に」との事項を追加することは新規事項の追加に当たると主張する。
しかし、前記ア(イ)で述べたとおり、着脱可能とする構成について、特定の構成を採用しなければならないとする特別の要請があるとは認められず、具体的な構成まで特定しなければ「LEDユニットを交換可能とする」という発明の課題を解決できないということはなく、着脱可能にする構成のうち、親出願の当初明細書等に記載された具体的な構成に係る技術的事項のみが親出願の当初明細書等に記載されていると限定する根拠はない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
⑷ 本件特許の請求項1に記載の「透光カバー」との事項について
…親出願の当初明細書等における上記各記載は、「カバー4」がLEDモジュール20からの光を透過する性質を有することを示すものであり、また、そもそも照明装置の光源を覆うカバーが光源の光を透過させる性質を有することは技術常識であることからしても、親出願の当初明細書等に記載の「カバー4」が光を透過する性質を備えていることは明らかである。…
したがって、「透光カバー」という用語自体が親出願の当初明細書等で用いられていなかったとしても、本件特許出願の請求項1の「透光カバー」という事項は、…親出願の当初明細書等に対して新たな技術的事項を追加するものではなく、新規事項の追加には当たらない。
原告は、本件審決が、「光のむらを抑える」ことではなく、カバーの構成と直接に関係しない「LEDユニットを交換可能とする」という課題を認定し、それとの比較で、カバーの構成が課題解決に必要不可欠な構成ではないと判断したのは誤りであり、特許法70条2項の規定にも反する旨主張する。
…原出願の出願当初の明細書等に記載された事項…を明らかにするために発明の課題を認定するに当たっては、原出願(本件において検討すべきものは親出願)の当初明細書等の【発明が解決しようとする課題】欄、【発明の効果】欄の記載のみにとらわれることなく、明細書及び図面の全ての記載事項に加え、出願時の技術常識を考慮して課題を把握すべきであり、…親出願の当初明細書等に、多数の実施例に対応する多数の課題が記載されていると認められる場合、多数の中の一つの課題を解決するための構成が記載されているならば、…その構成が、仮に他の課題の解決に資するものではないとしても、親出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項に含まれるという認定が否定されることはないというべきである。
…「LEDユニットを交換可能とする」という課題…との関係で、親出願の当初明細書等には光拡散性のないものも含めて「カバー」という技術的事項が記載されており、それが、親出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術事項に含まれると認めることに誤りはないというべきである。…
したがって、原告の上記主張は採用することができない。」
3.本件のより詳細な説明、及び、判決内容の考察
3-1.判決についての感想
全体的な結果について:納得度40%
日本では特に、明細書中に課題が複数ある場合に、本願発明の課題の認定が問題(争点)となる。また、課題の認定は、典型的にはサポート要件充足性の議論の中で争われる。
一方で、本件は、分割出願の実体的要件の判断において「複数の課題」の存在が問題となっている点で、興味深い裁判例と言える。なお、分割出願の実体的要件は、比較対象が分割出願と原出願の記載になるが、具体的な判断は新規事項と同様に行われる。
つまり、本判決は、分割要件だけでなく、補正における新規事項の追加に当たるか否かの判断にも影響するものである。
個人的に、結論には疑問が残る(どちらかというと結論には反対意見である)が、知財高裁の示した判断の骨子は、合理的であり、実務においても活用できそうな考え方だと思っている。以下、この点について考察する。
3-2.本件特許について
本件特許の発明の名称は「LED照明装置」である。LED照明装置そのものは、家電量販店でも販売されており、少なくともこの投稿を読まれる方で、LED照明装置自体がどんな物かわからないという人はいないだろう。但、本件特許の「LED照明装置」は、いわゆる一般家庭向けの照明ではなく、オフィスに設置されるような照明をベースにしているものと考えられる。(下図参照)
本件特許は、明細書が【0280】段落まであり、図面は114もある。また、第24実施形態まで種々の実施形態が開示されている。(なお、本件特許は、13件の出願に対する国内優先権が主張されている。)
複数の文献に対し優先権を主張しているせいか、本件特許には、以下のように、背景技術において発明の課題に繋がりそうな問題点が複数挙げられている。
本件特許の【背景技術】の記載(本件特許より抜粋、一部省略、下線は付記)
【0003】
しかしながら、従来の蛍光ランプが用いられた照明器具は、…照明器具に複数のLED照明装置Xを取り付けると、隣り合うLED照明装置Xどうしの間に発光しない暗部が生じてしまう。これを見る者は、見栄えがよくないと感じてしまうことがある。…
【0004】
さらに、LED照明装置X…からの光は輝度むらを生じやすい。この輝度むらが顕著であると、見る方向によっては、個々のLEDチップ92が視認できてしまう場合がある。このようなことでは、見る者が見栄えがよくないと感じてしまうことがあった。
【0005】
また、…長時間に渡る使用により部品が劣化し、傾いたり向きがずれたりして、見栄えが悪くなることが懸念されている。
【0006】
また、…狭い範囲内に複数のLED照明装置の端部が異なる向きに配置されることが想定される。このような場合、見る者に煩雑な印象を与えてしまい、見栄えが悪くなることが懸念されている。
【0007】
また、…天井を見る者は、LED照明装置Xおよび上記一般用蛍光灯照明器具が天井からかなり飛び出た印象を受ける。この天井からの飛び出しが、屋内の様子をスマートな印象に統一することを阻害するといった問題があった。
【0008】
また、…天井から相当飛び出た格好となる…LED照明装置Xは、室内が煩雑であるという印象を与えてしまうことがあった。
上記背景技術の記載は原出願(特開2011-142063号)と本件特許とで共通している。一方で、【発明が解決しようとする課題】は、原出願の第1世代の分割出願において原出願と異なる内容に変わっている。また、第1世代から第3世代(本件特許)まで課題は共通している。
原出願の【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、室内がスマートであるとの印象を与えうるLED照明装置を提供することを課題としている。
本件特許の【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、輝度むらを抑制することが可能なLED照明装置を提供することをその課題とする。
パナソニックが、本件特許の課題を「輝度むらの抑制」と主張する根拠の一つに、上記の課題の記載があるものと推察される。
さて、本件特許の請求項1は、以下の通りである。
【請求項1】
LEDユニットとマウント部とからなるLED照明装置であって、
前記LEDユニットは、
複数のLED発光部と、
前記複数のLED発光部が長手方向に沿って配列された長尺状の基板と、
断面コの字状であり、前記コの字状の底面部の外側に前記基板が設けられたベース部と、
前記基板および前記ベース部の前記底面部を覆う長尺状の透光カバーと、
を備えており、
前記マウント部は、長尺状の底板部、および前記底板部の短手方向両端から起立する2つの壁部からなる凹部を備え、
前記LEDユニットは、前記マウント部の前記凹部に着脱可能に取付けられる、LED照明装置。
このように、本件特許は「LEDユニットが着脱可能に取り付けられるLED照明装置」の発明だが、この「着脱可能」という事項を開示しているのが、第1実施形態と、第21実施形態である。
第1実施形態において、LEDユニット2がマウント1に取り付けられた状態が、下の左図(図2)である。また、LEDユニット2をマウント1に押し込んで取り付ける様子を示しているのが中央の図(図10)である。また、LEDユニット2をマウント1から取り外すときの様子を示しているのが右図(図11)である。
具体的に、LEDユニットは、マウント1が備えるホルダ11によって固定される。ホルダ11は、可撓部11bと係止片11aとを有し、一対の係止片11aは弾性変形可能である(本願段落37及び38)。LEDユニット2は係止溝323を有し、この溝が係止片11aと係合する。よって、LEDユニット2を押し込むことで取り付けることができ、取り外すときは、取り外し治具Dで係止片11aを押し、係止溝323から係止片11aを外す。
このようにして「LED照明装置A1は、マウント1からLEDユニット2を容易に取り外すことができる」ことが、段落58に記載されている。
第21実施形態では、ホルダ11によってLEDユニット2がマウント1に固定される構造は、第1実施形態と同様である。一方で、第21実施形態では、LEDユニット2を固定するために、さらにワイヤホルダ161が設けられている。ワイヤホルダ161は、図104に示すように、回動させることができ、ワイヤホルダ161の開閉状態によって、LEDユニット2の取り外しを制御する。
このようなLED照明装置A21により「ホルダ11は、LEDユニット2をマウント1に対して簡単な作業で取り付けることを可能としている。また、ホルダワイヤ161は、LEDユニット2の脱着を容易に行うのに都合がよい」と、段落266に述べられている。
3-3.判決の考察(分割要件の判断について)
実体的要件の判断基準
知財高裁は、分割要件の実体的要件についての判断基準について、以下のように述べている。これは、ソルダーレジスト大合議判決で、新規事項の判断について述べられた規範を踏襲している。従って、審査基準もこの実体的要件の判断を新規事項と同様の判断で行うとしているが、この点は、裁判所と特許庁とで同じ考えに立っているといえる。
知財高裁の判断(判決より抜粋、下線・太字は付記)
⑵ 分割要件の判断基準について 特許出願の分割は、…分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であることを要する。そして、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項とは、当業者によって、原出願の出願当初の明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、分割出願の明細書等に記載された事項が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、分割出願の明細書等に記載された事項は、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内にあるということができる。そして、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内というためには、分割出願の明細書等に記載された事項が、出願当初の明細書等に明示的に記載された事項である場合のみならず、出願当初の明細書等の記載から自明な事項、すなわち、出願時の技術常識に照らし、出願当初の明細書等に記載されているのと同然であると理解することができる事項をも含むものというべきである。
分割出願の実体的要件(新規事項)の趣旨
分割要件の適否における新規事項の判断と、補正の適否における新規事項の判断とは、いずれも、同様の趣旨に基づいているものと考えられる。つまり、先願主義の下で、出願時には表れていなかった技術を、出願後に、あたかもそれが出願時から表れていたかのように主張することを制限する趣旨である。
簡単にいえば「後出しはダメ」ということである。
特許出願において、新規性や進歩性などの特許性の審査は、出願時を基準にして行われる。そのため、出願時に表れていなかった技術が後から追加されるとなると、追加された事項についても審査の基準時の利益が享受されることになるが、これでは出願人が不当に利益を享受することになり、先願主義の潜脱になりかねない。
このような法の趣旨からすると、新規事項の本質は、「特許出願時に、発明者が、明細書等によってどのような発明を開示したと言えるかを、当業者の視点から合理的に判断することにあると言えるはずである。
分割出願の場合、特許法44条2項によって、原出願の時にしたものとみなされるという効果が生ずることを考えれば、分割出願時ではなく、原出願時にどのような発明を開示したと言えるかを判断しなければならないだろう。
また、発明が第三者に開示されたことの代償として特許権が与えられるという法制度からすると、発明者が特許出願によって開示したといえる発明の範囲は、発明者の主観ではなく、当業者の客観から判断すべきである。
発明者が「出願当時、この発明をこういう風に考えていた」という主張(陳述)は、その主張が、明細書等に開示された内容から合理的に導けるのであれば(その主張が明細書等に明示されていなくても)認められるであろうが、合理的に導けないのであれば認めるべきではない。
なぜなら、出願人側には、発明を適切に開示する義務があるからだ。裏を返せば、開示した範囲に見合う権利しか、出願人には与えてはならないのである。
「新規事項の判断」と「発明の課題」との関係:その1
新規事項における「新たな技術的事項が導入されたか否か」の判断は、上述したように、出願時に明細書等に開示された内容が、どこまでの発明を開示したといえるかの判断である。
そうすると、開示された発明の範囲を認定するため、その考慮要素の一つに「発明の課題」を持ち出すことは適切といえるだろう。発明者は、何らかの課題を解決するための手段として発明を開示するのであり、「課題」は、その発明者が開示する技術の意義を客観的に推し量る判断材料といえるからである。
その上で、本件では、新規事項にあたるか否かの判断において、考慮要素となる「課題」をどのように扱うべきかという点が争いになった
パナソニックは、本件特許の【発明が解決しようとする課題】に記載された「輝度むらの抑制」を基準にすべきという立場で「透光カバー」が新規事項に当たるとの主張を展開した。
パナソニックの主張(判決より抜粋)
「本件発明1が解決しようとする課題は、「光のむらを抑えること」であるところ、光拡散性のない透明なカバーではこのような課題を解決することはできないから、親出願の当初明細書等には、あくまで拡散性を有する「カバー」部材だけが開示されていた。しかし、本件特許の請求項1には「透光カバー」という事項が追加され、拡散性の有無を問うことなくおよそ光が透過すれば足りるものとされたから、これによって、親出願の当初明細書等の「カバー4」は、光を拡散させるという概念を除外して上位概念化されたものである。「透光カバー」という事項は、親出願の当初明細書等に明示的に記載されていないし、その記載から自明でもない。したがって、本件特許の請求項1に「透光カバー」という事項を追加することは、新規事項の追加に当たる。」
これに対し、アイリスは、次のように反論した。
アイリスの主張(判決より抜粋)
「親出願の当初明細書等には、原告が主張する「光のむらを抑える」という課題のほかにも多種多様な課題が記載され、それらの課題を解決する複数の発明も記載されているが、本件特許出願は、このうち、「LEDチップ22の特性が変化したときなどにLEDユニット2を交換可能とする」という課題を解決するための発明を権利化するために分割出願され特許されたものである。このことは、被告が、本件特許出願後に提出した平成29年3月9日付け上申書(甲13)において、孫出願の審査で挙げられた2件の引用文献との差異に関し、「当該引用文献1、2には、LEDユニットが、マウント部の凹部に着脱可能に取付けられる構成は何ら開示されていない。」との主張をし、このような主張が認められて特許査定された審査経緯からしても明らかである。」
そして、知財高裁は、以下のように判断すべきとの解釈を示したうえで、パナソニックの主張を退けた。
知財高裁の判断(判決より抜粋、下線は付記)
「原出願の出願当初の明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項を明らかにするために発明の課題を認定するに当たっては、原出願(本件において検討すべきものは親出願)の当初明細書等の【発明が解決しようとする課題】欄、【発明の効果】欄の記載のみにとらわれることなく、明細書及び図面の全ての記載事項に加え、出願時の技術常識を考慮して課題を把握すべきであり、特に、明細書及び図面に多数の実施例が開示されている場合には、各実施例に対応する種々の課題も、明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項に含まれるものと認められる。そのため、親出願の当初明細書等に、多数の実施例に対応する多数の課題が記載されていると認められる場合、多数の中の一つの課題を解決するための構成が記載されているならば、…その構成が、仮に他の課題の解決に資するものではないとしても、親出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項に含まれるという認定が否定されることはないというべきである。」
この知財高裁の判断は適切だと思う。既に述べているように、新規事項か否かの判断は、出願時にどのような発明が開示されていたかの判断である。また、特許法は、一つの出願に複数の発明を開示することを認めている(そうでなければ分割出願という制度は存在しない)。
明細書等において、複数の発明が開示され、また、それぞれの発明に対応する課題が開示されているのであれば、それらの発明を、特定の一つの課題(本件でいうところの当初明細書等の【発明が解決しようとする課題】欄、【発明の効果】欄の記載のみから特定される課題)に対する開示と考えるのは、客観的にみても、出願時に発明者が開示したであろう発明とは言えず、これを不当に制限するものと解することができるだろう。
これがサポート要件(発明が課題を解決するものとなっているか否か)の話であればともかく、新規事項に当たるか否かの判断においてはまさに「明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項」か否かを判断するのであって、当業者の視点から客観的にみて「その出願における発明=請求項に記載された発明」が解決する課題に縛られる必要のない技術的事項が開示されていると読み取れるのであれば、このような課題に拘泥するのは、新規事項の判断の本質からは、ずれているように思う。
そして、上記の知財高裁の判断に与するならば、明細書を作成するときに、複数の課題を記載しておくことが、新規事項の判断に有利に働くといえるだろう。
つまり、明細書において【発明が解決しようとする課題】の他に課題を見出すことができないのであれば、明細書等に開示される技術的事項は、その課題の解決に資する技術要素として解釈される方向に向かいやすいといえるだろう(但、当業者の技術常識から、明らかに課題の解決とは関係の薄い事項であると認識されるような技術的事項は、ことさら課題に縛られることはないと思う)。
一方で、要所要所に技術的事項に対応する課題を記載しておけば、その技術的事項はその課題に応じたものとして解釈され得るため、他の課題に縛られるリスクは減少する方向に向かう。本件でいえば、輝度むらを抑制するという課題に資する発明における「カバー」の解釈と、「LEDユニットを交換可能にする」という課題に資する発明における「カバー」の解釈とは、拡散性を要するか否かの点で、異なり得るというわけである。
新規事項の判断と発明の課題との関係:その2
一方で私は、「着脱可能に」についての知財高裁の判断には疑問を呈する。
知財高裁は、当初明細書等においては「室内がスマートであるとの印象を与えうるLED照明装置を提供する」という課題の他に「光のムラを抑える」という課題や「LEDユニットを交換可能とする」という課題が、「発明の課題」として記載されていると認定した上で、次のように判断した。
知財高裁の判断(判決より抜粋、下線は付記)
「親出願の当初明細書等には、「LEDユニットを交換可能とする」という課題が記載されており、この課題は、LEDユニットが「着脱可能に」取り付けられていれば解決可能なものであって、着脱可能とする構成について、特定の構成を採用しなければならないとする特別の要請があるとは認められず、具体的な構成まで特定しなければ解決できないということはなく、当業者であれば、技術常識に照らし、着脱可能とする適宜の方法を選択して解決することができるものと認められる。 …親出願の当初明細書等は、ホルダ11の可撓部11bの弾性変形を用いて取り付け、取り外す構成と、LEDユニット2をマウント1の凹部10aにワイヤホルダ161を介して取り付け、取り外す構成という複数の態様を開示しているということができ、これらの複数の取り付け、取り外す構成を包含する発明特定事項について、「着脱可能に」と特定することは、親出願の出願当初の明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるといえ、親出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内であるものといえるから、新たな技術的事項を導入するものとは認められない。」
しかしながら、知財高裁が「LEDユニットを交換可能とする」という課題「発明の課題」としておきながら、「LEDユニットは着脱可能に取り付けられる」との発明特定事項を認めたことは、果たして適切な判断だっただろうか。
一般に、「発明の課題」とは「従来技術では解決できなかった課題であり、本発明によって解決される課題」である。そして、発明の課題を解決する手段は、その発明における本質的部分であり、課題の解決との関係性が薄い技術的事項に比較して、その上位概念化を認めるか否かは、慎重に判断しなければならないと思う。
審査基準には、新規事項の判断に関し、「(1) 発明特定事項を上位概念化、削除又は変更する補正の場合」において、「例えば、削除する事項が発明による課題の解決には関係がなく、任意の付加的な事項であることが当初明細書等の記載から明らかである場合には、この補正により新たな技術上の意義が追加されない場合が多い。」と述べている。
審査基準に法規範性はないが、考え方として、課題の解決に関係しない部分については、当業者が「課題の解決に関係しない部分であること」を客観的に理解できるのであれば、発明の課題との関係では、明細書に明示されている具体的な技術的事項があくまで一例でしかないことを認識できるのであり、ひいてはそれが出願当初に発明者が開示した発明の範囲(意図)と酌むこともできるのであるから、この部分を上位概念化したり削除することは認められやすいといえるだろう。
つまり、上位概念化によって新たな技術的事項が導入されているか否かの判断は、その技術的事項が、発明の課題を解決する手段に密接に関係する技術的事項であるか否かを、考慮要素の一つとしなければならないと、私は考える。
なぜならば、発明の課題を解決する手段は発明の本質的部分であり、特許権の付与を認める直接的な理由の一つともいうべき部分であるのだから、付与される特許権の権利範囲が発明の開示に対して不当に広くなりすぎると、実質的な発明者の貢献(発明の公開)以上に出願人を保護することとなり、これによって必要以上に第三者の実施が制限されることとなってしまっては、特許法第1条が目的とする「産業の発達」を却って阻害してしまう結果になりかねないからである。
具体的に本件について検討してみる。
本件特許は、「LEDユニットを交換可能とする」という発明の課題に対し、第1実施形態では「係止片11a及び可撓部11bを有するホルダ11にLEDユニット2の係止溝323を係合する構造によってLEDユニット2の着脱を可能としている。また、第21実施形態では「ワイヤホルダ161をマウント1に対して回動可能とし、ワイヤホルダ161を開状態とすることで、LEDユニット2が着脱可能な状態となる。
このように、対象特許は、物理的に、LEDユニット2の動きが制限される状態を作り、その物理的な状態を解除する機構を設けておくことで、LEDユニット2が着脱可能な構造を実現している。
一方で、パナソニックが「ネジや磁石を利用した方法など、およそ取り付け、取り外しが可能な任意の構成を意味するものであるから、このような方法も全て本件発明1の技術的範囲に入る可能性が生じる」と主張しているが、ネジについては措くとして(なぜなら、明細書にはマウントをネジで固定する形態が開示されており、これを着脱可能な形態として捉えていない以上、ネジを利用した方法が、本件特許における「着脱可能」に含まれるかの議論があるからである。)、少なくとも磁石を利用した形態はこのような機構に該当しない。なぜならば、磁石を利用した場合、磁力に勝る力で引き離せば取り外せ、その意味で、常に取り外しが可能な状態のまま取り付けられており、解除のための物理的な機構は不要だからである。
一方で、「LEDユニットを交換可能とする」という発明の課題に対し、本件特許の請求項1は、これを解決する手段として「前記LEDユニットは、前記マウント部の前記凹部に着脱可能に取付けられる」という発明特定事項を規定するに留まる。
しかしながら、「交換」とは、取り換えることであり、そこにあったLEDユニットを取り外し、新たなLEDユニットを取り付けることである。そのため、「LEDユニットの交換」という作業を行うためには、「取り付けられたLEDユニットを取り外す」ことができなければならず、取り外すことができるということは、言い換えれば着脱可能ということである。
このように、「LEDユニットを交換可能とする」ということと「LEDユニットを着脱可能にする」ということは、およそ同じ内容の言い方を変えているに過ぎず、請求項に「発明の課題が解決可能な装置である」ということを規定したことと実質的に相違がない。(例えば、「処理速度が遅い」という課題に対し「高速で処理が可能である」という発明特定事項を記載したようなものである。)
確かに、あらゆる場合においてこのような発明特定事項の記載が認められないと断言することはできない。例えば、その課題の発見自体に発明としての高い価値を見出すことができ、どんな手段であれそれを解決すること自体が発明として優れていると言える場合には、このような記載も認められる余地はあるように思う。
しかし、課題自体の発見に特別の貢献がないような場合、言い換えれば、そのような課題が存在すること自体は当業者によって既に知られているような場合において、課題の裏返しをそのまま記載したような発明特定事項によって特許権が認められるには、出願時において、その課題が発生すると当業者が想定できる状況の全てに対し、実質的にその解決手段を開示したと言えるような場合に限るべきではないだろうか。
なぜならば、課題の存在が当業者に了知されている以上は、具体的な事例において課題を解決したことが、発明者による産業の発達への具体的な貢献といえるからである。一方で、発明者によって開示された発明が、別の具体的な事例においては課題の解決に有益でないとすれば、そのような別の具体的事例にまで特許権の効力が及ぶのは、発明者の開示に対して不相応に広範な権利を認めることになりかねず、第三者の実施を不当に制限する結果を招来することになりかねない。
また、既に述べたように、新規事項の規定の本質である「それが出願時に発明者によって開示された発明といえるか」という点からみても、着脱可能な構造について上述の実施形態を開示するに留まり、また、これらの具体的な実施形態の開示に基づいて、磁石などの他の方法も含め、着脱可能とする構成を採用することができるといった記載や示唆もされていない明細書等の開示から、特定の構成を採用せずとも「着脱可能」であればよいという発明を出願時に開示したものと、客観的に認識できるだろうか。
知財高裁は「着脱可能とする構成について、特定の構成を採用しなければならないとする特別の要請があるとは認められず、具体的な構成まで特定しなければ解決できないということはなく、当業者であれば、技術常識に照らし、着脱可能とする適宜の方法を選択して解決することができる」と述べている。
しかし、原出願の出願当時、当業者において「磁石」という選択肢も考えられるとしたら(例えば、特開2009-140669号)、本当に本件特許が、新たな技術的事項を導入することを要せずに、「磁石」によって着脱可能とする形態までを含め、発明を開示したといえるだろうか。
知財高裁が明細書のどのような記載を根拠にそのような判断を行ったのか、判決からは判然としない。
このように、その技術的事項が、明細書等に記載される発明の課題に対し、どの程度の密接さで関連する技術であるか否かを考慮せずに、当業者が技術常識を踏まえて明細書等の開示をどのように認識できるかを考慮した知財高裁の判断は、審理不尽の違法があったのではないだろうかという疑問が残る(上告受理の理由になるのではなかろうか)。
3-4.その他
なぜ、新規事項で争ったのか
パナソニックは、「着脱可能に」や「透光カバー」といった請求項の記載に対し、新規事項の追加に基づく分割要件違反で争っているが、一方でサポート要件違反では争っていない。
例えば、パナソニックは「親出願の当初明細書等には、「カバー4」という語しか記載されておらず、本件発明1が解決しようとする課題は、「光のむらを抑えること」であるところ、光拡散性のない透明なカバーではこのような課題を解決することはできないから」と述べた上で、続けて「親出願の当初明細書等には、あくまで拡散性を有する「カバー」部材だけが開示されていた。」と述べ、新規事項の結論を導こうとしている。
しかしながら、前段の「光拡散性の有無を特定しない「透光カバー」では発明が解決しようとする課題を解決できない」という論理は、普通に考えれば、サポート要件違反の論理のように思える。新規事項の判断は、あくまで、当初明細書等に開示されている発明が何かであって、これを「本件発明(=分割出願に係る発明)の課題」という観点から捉えるのは、やや強引な感じがする。
そもそも、「輝度むらを抑制する」という課題は、当初明細書の【発明が解決する課題】に記載されていた事項ではなく、第1世代の分割出願に記載されていた事項である。当初明細書に記載されていた【課題】でもないのだから、分割出願時に変更された【課題】を持ち出して明細書等の開示を限定解釈しようとするのは、まさに「後出し」の論理であって許されないであろうことは想像に難くなかったようにも思える。
また、上述したように「着脱可能に」というのが、出願当初の開示を超えているのであれば、やはり、そこまで拡張ないし一般化はできないとして、サポート要件違反で争う方が自然ではなかっただろうか。
アイリスは、本件で「本件特許出願は、このうち、「LEDチップ22の特性が変化したときなどにLEDユニット2を交換可能とする」という課題を解決するための発明を権利化するために分割出願され特許されたものである。このことは、被告が、本件特許出願後に提出した平成29年3月9日付け上申書(甲13)において、孫出願の審査で挙げられた2件の引用文献との差異に関し、「当該引用文献1、2には、LEDユニットが、マウント部の凹部に着脱可能に取付けられる構成は何ら開示されていない。」との主張をし、このような主張が認められて特許査定された審査経緯からしても明らかである。」と述べているように、発明の課題が「LEDユニット2を交換可能とする」ことにあり、「着脱可能に取り付けられること」が引用文献1、2との相違点(=本願発明の技術的特徴)であることを認めている。 そうすると、発明の課題に対し、「着脱可能」に取り付けられる種々の形態を十分にカバーしているとはいえないとして、サポート要件違反を争うことができたのではないかと思う。
新規事項の判断において、発明者と第三者(当業者)のどちらを重視すべきか
最後に、次のような場合に、新規事項に当たるか否かをどのように判断すべきであろうかという疑問を投げかけておく。考え方は色々だと思うので、気が向いたら考察してみるのもいいかもしれない。
事例
客観的に見て、明細書等から発明者が開示したと判断できる発明よりも、出願時の技術常識に基づき当業者が明細書等を読んで合理的に認識できる発明の方が広かった場合
発明者がどんな発明を開示したのかを重視する立場からは、特許出願において開示された発明は前者の発明に留まり、出願人が後者の発明にまで権利を求める行為は、新規事項に該当するという結論を導きやすい。また、この結論は、発明者の認識を超えた発明にまで権利を認めるべきではないという考えに立脚しているとも考えられる。(明細書等から客観的に読み取れる発明者の認識を重視するという観点から、発明者認識説ということにする。)
一方で、第三者が認識できる発明が何かを重視する立場からは、出願人に後者の発明にまで特許権を与えることは、新規事項に該当しないという結論を導きやすい。また、この結論は、特許権は公開代償なのだから、第三者が発明を認識できる以上、公開の代償として特許権を認めても問題ないという考えに立脚しているとも考えられる。(明細書等から客観的に読み取れる第三者(当業者)の認識を重視するという観点から、第三者認識説ということにする。)
私個人の意見は、たとえ出願時の技術常識から第三者が認識できるとしても、発明者の認識を超えた発明にまで権利を認めるべきではないという立場、つまり、発明者認識説の立場である。一方で、本件の知財高裁は、どちらかといえば、第三者認識説の立場を取っているように見受けられる。
ソルダーレジスト大合議判決は、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲には、明示的に記載された事項だけでなく、自明な事項も含むとしており、また、自明な事項について、「出願当初の明細書等の記載から自明な事項、すなわち、出願時の技術常識に照らし、出願当初の明細書等に記載されているのと同然であると理解することができる事項」と判示している。
このように「記載されているのと同然である」という言い回しを用いたのは、「当業者が、技術常識を踏まえて、明細書等に開示された内容をどのように認識できるか」という観点で判断するだけでは足りず、客観的にみて出願時に発明者がそこまでの発明を明細書等に開示したといえるかどうかを判断すべきと言っているように、個人的には感じる。
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